彼と彼らの日常。03





ちゅーかありえへんし!俺、こないなオッサン相手に抱きつくような趣味持っとらんわ!



そう叫びたいが、目の前にある写真に映し出されているのは明らかに、俺自身で。俺たちを囲むように立つクラスメートたちの目は、俺からの一切の弁明を、拒絶していて。



「…最近自然に接してきてくれるようになって、話しかけ易うなったって、白石んこと、皆えぇなって、言うてたんに。がっかりやわ」



目の前に立った彼は、その顔にはっきりと“落胆”の二文字を写すと。手にしていた写真を握り潰すように丸めると、離れていった。


俺はただ、遠ざかって行くその背中を。そして自分から離れて行ってしまったクラスメートたちの気持ちを。


見ていることしか、出来なかった。




そんな彼らの後ろで、ほくそ笑んでいる人間がいたことになど、気付かずに。





手元に残ったのは、一枚の写真。何度も見たくないからしっかりと二つに折りたたまれた、俺を突き落とすキッカケとなった忌々しい写真。



そして。



「白石?自分こないなとこで何しとるんや?」

「こない日陰におると、頭からキノコ生えるっちゅー話やで」

「…二人とも、これ、見てくれるか?」



廊下の隅でひっそり佇んでいた俺を見つけてくれた小石川と忍足に。おずおずと写真を差し出す。


賭けだった。この二人が俺のことを、信じてくれるか、どうか。


だがその結果なんて、最初から分かっていたのかもしれない。



「…なんやねん、これ」

「性質悪い悪戯やなーてか、よう出来とるやんけ。ホンマにちゅーしとるみたいやで!」



けらけらと笑いだした忍足の頭を、空気読めやと小突く小石川。予想した通りの反応に、思わず笑みが零れる。



大丈夫、俺はまだ大丈夫。
こいつらがいるから、大丈夫。




白石蔵ノ介。入学してから三か月目の高校一年生。
希望と栄光に輝くはずだった俺の高校生活は、わずか一日目から挫折。その後どうにか、当初の予定とは大分違う形だけれどもそれなりに希望に溢れる高校生活を送っていました。


そして今、大きな壁にぶち当たっています。



だがしかし。俺はこんなことで、へこたれたりはしません。以前の俺だったら露知らず、今の俺なら。



「壁は高い方がえぇっちゅーねん!その方がぶっ壊し甲斐があるっちゅー話や!」

「ちょ!それ俺の台詞!パクんなや!」

「…ま、無理しない程度に頑張りや。俺も出来る限りんことは、協力するさかい」



そんな壁、簡単にブチ壊してやりましょう。
そう、思ったのですけれどもね。





「お、ちゃんと職員室行けたんか?」

「…場所わからへんかったから、今度行く」

「んもう!やから一緒に行ったるて、言うたやないの」

「俺、そないガキちゃうもん」

「「ガキやろ、ガキ」」



その傍に更にもう一つ、大きな壁があることなんて。
目の前の壁を壊すことだけに躍起になっている俺は、気付くことすら出来ませんでした。












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