※オリジナル女性(オサム恋人)目線のオサム→千歳です。








自分に嘘を吐いてまで一緒にいることに、何の意味があるのかしら。




オンリーロンリー



愛しているとかお前だけだとか、そんな言葉全部、嘘に聞こえる。嘘に決まっている。

だっていつだって、あなたは私なんて見ていないもの。いいえ、見ないように、なってしまったもの。

それがいつからだってことも、あなたが誰を見ているかなんてことも、全部わかっている。
わかっていても言わなかったのは、女の意地。必ず私の元へと戻ってくるという、小さな意地。


だけど、だけどね。



「私な、一番やないと嫌やの。誰かの代わりなん、もっと嫌。それって、私だけやのうて、もう一人の子にも、すごく失礼」


あなたは結局、あの子に囚われたままだった。
いつまで経っても、私の方を見てくれなかった。


だから、だからね。


「もう、別れよ。これ以上一緒におったって、意味ないわ。私やってな、あんた以上の人、見つけたいし。嘘吐いてまで一緒におられても、迷惑やわ」



これでもう、さよならね。




いつからだったか、鳥肌が立つくらいに優しく丁寧だった愛撫が、荒々しいものに変わっていった。
それはまるで、吐き出し所のない欲を、無理矢理吐き出すように。

本当は抱きたい相手が、優しく愛したい相手が、他にいるかと言うように。


事実、他にいたのよね、その頃にはもう。相手は一度だけ見たことがある、大きな子。私とは似ても似つかない、男の子。

勘付いてはいた、他に好きな人が出来たって。だけどそれが男だなんて、ましてやあなたの学校の生徒だなんて、その子に向けるあなたの眼差しを見るまで思いもしなかった。
だからかな、一時の気の迷いに決まっているって、思っていた。絶対に私の方をまた見てくれるって、信じていた。

結局それから半年近く。私たちの関係はずるずると続いて。あなたがあの子に向ける気持ちは、どんどん大きくなっていって。


あなたが泣きそうな顔をして、一緒に住もうって言ってくれたとき。もう無理だって思った。
そしてあなたが、あの子への気持ちを断ち切る為に私を利用しようとしているってことに、気付いてしまった。



「言うとくけど、私がフッたんやからな。あんたのこと、見限ったんやからな。そこ、勘違いせんといて」



最後にちょっと強がり。

だってまだ私はあなたが、好きだから。だらしない所も、ギャンブル好きな所も、酒癖が悪い所も。それから、本当はすごく頼りになる所も。本当はすごく、優しい所も。自分よりも他人のことを、優先させてしまう所も。

まだ私は、好きだから。
大好きだから。

だからあなたと別れることは、本当は嫌。
だけどこれ以上一緒にいて、空しい想いをするのは、もっと嫌。誰かの代わりに愛されたって、それは愛じゃない。そんなの私も悲しいし、あなただって、悲しいでしょう?辛いでしょう?



「やからさっさと、慰めて来てもらって……あんたがホンマに、好きな相手に」



まだあなたは、彼に片想いしているんだろうけど。ついでに告白でも、してしまえばいい。
それで盛大にフラれたら、慰めてあげないこともない。

だけどそれはもう、恋人としてではない。ただの友達として。


「さよなら。いままでありがとう」


キーケースに、自宅や車の鍵と一緒に収められていた、この部屋の鍵を外して、静かにローテーブルに乗せる。ここにはもう、来ないって意思表示。この鍵はあの子に、渡されることになるのかな。

ごめんと呟いた彼に、一度だけ笑ってみせる。あなたが選ばなかった女は、こんなにいい女だったのよって、見せつけてやるように。

いつもより少し大きな音を立ててドアを閉める。これであなたが追って来てくれたらもう一度考え直そう、なんて思っていたけれど。部屋の中からは何の音も聞こえない。


あーあ、本当に好きなのにな。
あなただけだって、思っていたのにな。


頬を伝う暖かさには、気付かないフリをして。ゆっくりと、歩き出す。


あなたがあの子と、うまく行こうと行くまいと。私たちの道はもう、別れてしまったのだから。

もう一人で、歩かなきゃ。



最後に見上げたあなたの部屋。そこはちっとも変わっていなくて。相変わらず暖かい光を放っていて。



それがなんだかすごく、滑稽だった。



さよなら、大好きな人。
どうぞお幸せに、なんて。言ってあげないけれど。
どうかお元気で、くらいは、言ってあげる。


さよなら、大好きだった人。




End.






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