土方と銀時が顔を合わせれば喧嘩し合うのはいつものこと。 今日もまた例外になくこの二人は出会い、口喧嘩を始めた。 暫くすれば手が出て、乱闘騒ぎに発展するに違いない。 土方と巡回パートナーだった沖田は、小さく溜息をついた。 何故だろう。 今日は酷く気持ちが落ち着かない。 いつもならまたやってら、程度にうんざりしていたのに、今日はなんだか目の前の光景が酷く気に入らないのだ。 苛々する。 気遣い一つなくありのままに言い合う二人に、心の中のモヤモヤが増大していく。 沖田は誤魔化す様に赤くなった鼻を両手で覆い、ハーッと息を吐いて暖取りに専念した。 ずるずると留まるところを知らない鼻水が垂れてくる。 ズッと鼻水を啜ると、喉元にそれが下りてきて気持ち悪い。 「総悟」 不意に声を掛けられ上を向くと、銀時と言い合いしていたはずの土方がいた。 その手にはティッシュ。 土方はこの時期になると、沖田の鼻水を見兼ねて数個単位でポケットに忍ばせているのだ。 沖田はニヤリと笑い、その手の内の白を取る……と見せかけて土方の胸元にダイブした。 「うおっ!?」 「ズズーッ」 「コルァアアアア!!!てめぇ何してくれちゃってんのだ!?」 土方の隊服で、盛大に鼻水を噛んでやった。 離れてみると、土方の胸元には大量の粘着質がドロリとしている。 沖田はその様子に満足し、さぁさぁ行きましょうやと歩を進めた。 「おい総悟!!待てお前!!てめぇ俺をなんだと思ってやがる!!!」 「……土方君も大変ね」 銀時がぼそりと呟いたのが分かったが、土方の意識は完全に沖田に向いていた。 そのことが妙に心を軽くさせた。 銀時と喧嘩していたって、沖田の鼻水事情をきちんとわかってくれる。 なんだかんだでいつだって、沖田を優先してくれる。 それでこそ土方だ。 (アンタはそうやって、俺だけ見てればいいんですぜ) |