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 学校に入る前に俺は、クラスの噂で得た七不思議を、一つ一つ思い出してみた。
 まず一つ目、四時四十四分に大鏡を使って合わせ鏡をすると、自分の死に顔が見えてそのまま死んでしまうらしい。その時間までまだ四時間以上ある。面倒な。
 二つ目、音楽室にある肖像画の一枚、ベートーベンの目が光るらしい。誰だ発光塗料を塗った奴は。
 三つ目、二階の東廊下を歩いていると、上半身だけの男に追いかけられて足を切られるらしい。ちゃんと病院に行って義足をもらえ。
 四つ目、体育館で首のない少年が、自らの首をボールにしてバスケットボールをしているらしい。自分の首を投げたりドリブルしたりするなんて、どれだけマゾなんだ。
 五つ目、三階の女子トイレの奥から二番目に、花子さんがいるらしい。夜な夜な徘徊するとはこの不良め。
 六つ目、二階の男子トイレの手前から二番目に入ると、赤、青、黄色、どのマントがいるか聞かれ、答えようによっては殺されるらしい。古着は古着屋に持って行け。
 七つ目、理科室にあるはずの人体模型が三階の南廊下を走っているらしい。脱走するんじゃない。というかまた廊下か。
 ついでに、七不思議全てを知ると死んでしまう、という噂もあったが、こうして生きている所を見ると、どうやらデマらしい。そう考えていると、どこからか鎌を持ったおっさんが現れて、俺に声をかけてきた。
 おまえはもう……死とかなんとか言って鬱陶しかったので股間を蹴り上げて黙らせた。おっさんは股間を手で押さえ、呻きながら消えて行った。変質者は去るがいい。
 誰もいなくなった所で、七不思議の検証を開始する事にした。柵を乗り越え、学校に侵入する。夜の学校は、当たり前だが昼間の活気が全くなかった。
 さてどこから回ろう、と少し考え、俺はとりあえず一番近くにある体育館から行ってみる事にした。ヘッドバスケ野郎がいる所だ。体育館の前まで来ると、確かに何か質量のあるものが、一定の感覚で跳ねている音がした。
 観音開きの扉を開き、中に入る。真っ暗な体育館の中には、体操服を来た一人の男子がいた。ボール代わりにされている顔から判じてみると、年齢は十歳前後だろうか。首の断面は真っ黒で、特に血などは流れていなかった。ふむ、これが血も涙もない人間という奴か。
 ヘッドバスケ野郎はバスケをやめ、正面を向いた顔を抱えたまま、こちらをじっと見ている。鬱陶しいからこっち見んな。仲間にでもしてほしいのか。
 なんだか腹が立ってきたので、ナップザックの中からガムテープを取り出し、奴の頭を引っ掴んで胴体に乗せ、そのままぐるぐるとガムテープを巻いて固定してやった。これでもう、ヘッドバスケはできないだろう。何やら奴があたふたしていたのでよく見たら、顔の正面が背中の上にあった。つまり、俺は首を百八十度回転させて固定してしまっていた。頭に血が上っていたので、つい腹と背中を間違えてしまったらしい。ふむ、まあいいか。よくある事だ。
 そのまま元ヘッドバスケ少年を置き去りにし、俺は次の場所に向かう事にした。ここからだと、一番近いのは正面玄関の近くにある大鏡だが、生憎まだ時間にはなっていない。なので、次に近い二階の男子トイレに行ってみた。

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