ちるちるおちる。

 紅葉の美しい山道を、僕と彼女は歩いていた。道には落ち葉が降り積もり、歩く度ざくざくと乾いた音がする。
「崖、気をつけて。彼の二の舞は演じないように」
「……そうね」
 僕の台詞に彼女の顔が陰る。だが、すぐに明るく言った。
「先日御馳走してくれたオレンジピール、美味しかったわ。おかげで踏み出す勇気が出た」
「そう? それは良かった」
「ええ」
 彼女は晴れ晴れとした顔で頷く。
「一葉落ちて天下の秋を知る、って知ってる?」
 どん、と鈍い衝撃。
「彼ね、死ぬ前に一度だけ意識を取り戻して、言ったの。――あなたに突き落とされたって」
 ぐらりと身体が虚空に倒れこむ。無表情の彼女が一瞬だけ、すぐに青空がぐるりと目に映り、そして僕は、




【SCREEN.3inch】300字小説企画様/第五回御題:「落葉/オレンジピール」


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