ある日の中学生達──parallel world 4.

「そのオチじゃね……もう一度中学生のあたしたちを登場させて、中学生のあたしがそれまでの話を書いていたってオチにするんだ」
「でも、それだと今までと一緒じゃ」
「一緒だよ。一緒だけどそこを工夫して、そのあたしたちもまた、一番最初の中学生のあたしたちが書いた話だったって事にする」
 ……はい!?
「だからこその『永久輪廻』なんだよ、恵。この小説のタイトルはね。最初の章でも、特殊な作中作にするって書いてたでしょ?一番最後まで読んでもまた最初に戻る、いわば音楽の楽譜にあるD.C.(ダ・カーポ)が『終わり』や『続く』の代わりに入る小説、それが今回あたしが目指した小説なんだよ。何処からでも読めるし、何処までも終わらない。──果たして現実は、一体全体どれでしょうか?」
 澪は楽しそうに、ニヤニヤ笑っている。
「最後のオチの会話だって、そうそう考えるのは難しくもないよ。矛盾にだけ気をつけて、あとは普通の会話を書けばいい。例えば、今のあたしたちみたいな、ね」
「──────!!」
 我知らず、あたしは戦慄していた。
そうだ。よくよく考えてみれば、今のこの状況だって『中学生の澪がそれまでの話を書いていたってオチ』だ。だけど、これは現実だ。そう、紛れもない。何処かの小説の一ページなんかじゃない。
 そういえば、さっきの澪の言葉。
「『果たして現実は、一体全体どれでしょうか?』って、この原稿の中の言葉だよね?」
 どこかで出てきてた。原稿のどこかに。確か、一番最初だったはず。
 だけどそう言うあたしに、さーねぇ、と澪は意地悪く笑う。
「もしかしたら、一番初めの話のあたしが、書いてる原稿の中で今のあたしに言わせてるかもしれないよ?」
 バカげてるよそんなの、と言いかけて、あたしはやめた。
 この現実世界が実は誰かの創作物かもしれない、なんて澪の言葉を信じたわけじゃない。
 でも、一つ思い浮かんだ考えがあるのだ。
 ──もし、澪がこの小説を書いた理由が、締めくくりの言葉を変えたい、という理由だけではないとしたら……?
 ──もし、澪が目論んだ事が、現実世界をも小説に組み込む事だとしたら……?
 ……だとしたら、あたしは。
「……畜生、やられた」
「ん? 何?」
呟いたあたしの独り言が聞こえなかったのか、澪は訊き返してきた。なんでもないよ、と手を振って、あたしは別の言葉を言った。
「……まぁ、小説としては面白いんじゃないかと思うよ。オチ、また書いたら見せてよ」
 りょうかーい、と軽く敬礼して、澪は原稿を元入れていたクリアファイルに戻す。そして思い出したかのように、唐突にこんな事を言ってきた。
「ねえ恵、どうする?もし──」



「──もしあたしたちの行き着く先に、『D.C.(はじめにもどる)』の大きな文字が浮かんでいたら」




             【D.C.】

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