ある日の中学生達──parallel world 3.

「まあこれは、単にあたしの好奇心からの質問なんだけど。……なんでこんなややこしい小説書こうと思ったの?」
 再び澪は、うーん、と考える素振りを見せる。だけどそれはさっきのような、何も考えてなかったから今理由を考える、という思案ではなく、どう説明していいか、言葉に迷っての思案のようだった。
「……あのね。小説の締めくくりの文句って、大抵決まってるじゃん」
 口を開いた澪は、とつとつと語り始める。
「どんな小説でも、『終わり』か『続く』の二語。それが例え、『了』とか『続』みたいに一語で書いていようが、ちょっと工夫を凝らしてオリジナリティ溢れる長文で書いていようが、『Fin』とか『To be continued』とかみたいに英語で書いていようが、フランス語で書いていようが、イタリア語で書いていようが、グロンギ語で書いていようが──」
 グロンギ語って何処の国の言葉なんだろう。あたしはそう思ったけど、澪は真面目な口調で話していたので、口を挟むことはしなかった。
「──ともかく、噛み砕いてしまえばみんな『終わり』か『続く』のどっちかってわけ。わかる?」
 あたしは頷いた。
「で、思ったんだけどさ。それ以外に、何かできないかなーって。それが、」
 原稿を指さす澪。
「これ」
「……どういう事?」
 首を傾げて、あたしは訊き返した。この原稿は、大学生の澪がそれまでのあたしたち……作中の中学生のあたしたち、高校生のあたしたちの会話を書いていた、ってオチで止まっている。これじゃどう見ても『終わり』か『続く』の二語にしかならないはずだ。
 理解不能という表情のあたしに、澪はまるでいたずらを暴露するかのようにニヤリと笑って説明する。
「言ったでしょ、まだ最後の素晴らしいオチを書いてないって。……実は、最後のオチをどうにか工夫して、最初の話に繋げようと思うんだ」
 ……はい?
「……できるの?そんな事」
 澪は自身たっぷりに頷き、その自称素晴らしいオチのプロットを明かした。

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