ある日の大学生達

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「あはははははっ!!」
 思いきり笑ったあたしの声は当然向こうにも届いたらしく、言葉を投げかけてきた。
『どう?読み終わった?』
「うん、ちょうど今読み終わった。いやそんな事もあったなーって思ったよ」
『どれ?』
「最後の、高校生の章のオチ。あんた結局、英語と世界史の試験壊滅だったんでしょ?」
『あー。それね』
 電話の向こうからも、苦笑混じりの笑い声が聞こえてくる。
『まあ、なんとか欠点とるのは免れたけどさ。でもだいぶぎりぎりだったし』
「……にしても、どうしたのこれ? 古い作品の発掘?」
 あたしの問いに、電話の向こうの彼女──深塔澪は、うんと答えた。
『高校生の頃さ、あたし日記を書くーとか言ってたじゃん。で、それもただ普通に書くんじゃなくて、誰かの視点から書くって。で、これがその一部分』
 言われて、あたしこと新居橋恵は目の前のパソコンの画面を再び眺めた。そこには澪が電子メールで送ってきた、彼女の昔の日記の一ページが映し出されている。たまたま電話で話していると、そういえばこの間面白いものを見つけた、と先程送られてきたのがこれだった。
 因みに、今のあたしたちは高校生ではない。勿論中学生では決してなく、では何なのかというと大学生なわけだった。
 親友ながら中学、高校と違ってきたあたしたちは、とうとう大学も同じ所に行く、という事は叶わなかった。……まあそこはあたしが某芸大を目指し、それに受かったが故なのだが。当然ながら澪は芸大に全く興味がなかった。本人曰く、いつか何処かの出版社に何かしら物語の原稿を送り、それが認められれば大学に行きながら作家をやるのだと言う。
「ま、新しいっちゃ新しい日記だよね。しかもこれ、あたしが語り手だからあたしが小説作家になったみたいだし」
『実際は絵専門だけどねー』
「それ言ったらあんただって絵描けないでしょ?」
『……う。確かに、恵ほどでは』
 ちょっと参ったような口調の澪に、あたしはニヤッと笑って話を変えた。
「それで、どうなったんだっけ?この作中作」
 えーっと、ね、と一旦考えるように前置きしてから澪は言った。
『うん、ベッドにスライディングしたり、あ゙ぁ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙って発狂しかけたりしながら、なんとか書き上げて部誌に載せた。その時の部誌、発掘したらまた恵に見せるよ』
「ありがと。……じゃ、そろそろ切るよ」
『了解』
 澪の返答を合図に、あたしは携帯をことりと机に置いた。

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