X.

 自分の部屋に戻って短い睡眠をとった俺は、いつも通り母親に叩き起こされ、学校に行った。クラスに入ると、吉田失踪事件と大鏡損壊の噂が流れていた。教職員や警察の方では、吉田が失踪したのはなんらかの事件に巻き込まれたのではないか、大鏡は不審者に壊されたのではないかと別々に対策を立てていたが、クラスではもっぱら、吉田が大鏡の中の世界に連れて行かれ、その影響で大鏡が割れたのだという話になっていた。なんとも恐ろしい事だ。
 ああ、そういえば噂はもう一つあった。人体模型の足がなくなっていたらしい。これについても教職員や警察は、不審者の犯行──おそらく大鏡を割った人物と同一であるだろう、として捜索しているんだとか。早く犯人が見つかってほしいものだ。
 放課後、俺は掃き掃除をしながら、窓の外を眺めた。まだ係の三人は来ないらしく、俺はため息をつく。そして、ニヤニヤ笑っていた吉田を思い出し、一人寂しく掃き掃除に戻った。

 さよなら吉田。おまえの「ヨシダじゃないキチダだ」という口癖は、多分忘れない。



【了】


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