※大谷さんが女の子
※学パロ
※三吉





 星の数ほど居る人間にはひとりひとり違った心がありまして、十人十色千差万別、それも男と女でありましたら、わかりあうことなど無茶というもの。特に彼と彼女のケースはそれが著しく、しかし中途半端に長く馴れ合っているものですから、ふたりがふたつであることによる亀裂は根深いものなのでありました。
 いつもの放課後、いつもの屋上。その日は風の強い日でありまして、先に屋上に来た彼女は柵のすぐ側で真青い空を眺めておりました。彼女の全身を覆う白と空の青との対比がとても綺麗。彼は一瞬見とれた後、その小さな体が飛んでいってしまうのではないかと恐ろしくなりました。彼は慌てて近づいて、彼女の体が飛んでゆかぬよう己の腕の中に捕らえたのであります。
 背後から捕らえてみればその体は見るよりも小さく、薄く、硬いものでありました。ちゃんと食べているのかとか、体の調子は大丈夫なのかとか、彼の喉にはそんな言葉ばかりが溜まってゆきます。しかしどれも口から出ようとはせず、代わりに溢れ出たのは「好きだ」という好意の言葉でありました。

「さようか」

 しかし彼女の返事はいつも決まってこの四字で、彼の好意を受け入れるものでも拒絶するものでもないのです。苦しくなった彼は「愛してる」と言葉を続けました。彼女は首を振ります。

「ぬしのそれは哀れみよ」
「違う」
「違わぬ。ぬしは我を可哀想だと思っているだけなのだ」

 彼女は自分の病のことを言っているのか、ひひひと自嘲気味に笑っております。彼はその体をぎゅっと抱きしめて、しかし壊れぬように緩く手加減をしてから、また別の言葉を続けました。

「刑部は私をどう思う」
「我の世界の一番ぞ」
「それなのに応えてくれないのは何故だ」
「我が応えてはぬしが不幸になる」
「貴様が勝手に決めるな」
「決めたのではない、わかっているのだ」
「私にはわからない」
「いつかわかるであろ」
「愛してる」
「さようか」

 胸が痛くて、つらくて、彼はぽろぽろと泣きました。しかしそれは捕らわれた彼女の位置からは見えぬ涙でありまして、ぽろぽろ、ぽろぽろと声なく泣く彼を慰める者はどこにもありませんでした。
 いとしい。かなしい。


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