perfect world(三←吉)


 小さな部屋。狭い部屋。暗い部屋。
 ここは楽園である。なぜなら君がいるから。「あ」と言えば「うん」と言い、「好き」と言えば「愛してる」と言う君がいるから。

「今日は太閤のところへ行かぬのか」

 戯れに他の男の名を出せば、君は不機嫌そうに眉根を寄せる。

「行かぬ。どこへも行かぬ」
「徳川のところへもか」
「そのような名の者など知らぬ。私はずっとここにいる。ずっと刑部の傍にいる」

 いつもの少し離れた距離より近い、今にも触れ合いそうな距離。こちらの目の映る君の目がこちらを見ている。
 小さな部屋。狭い部屋。暗い部屋。
 ここは楽園である。なぜなら君がいるから。「あ」と言えば「うん」と言い、「好き」と言えば「愛してる」と言う君がいるから。
 よって幸せなここは夢の中である。こちらだけを見る君は存在しないから。

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