某社携帯CMパロ2(三+吉)
携帯がひひひと笑えば、それが着信の合図。三成は相手と二言三言交わして、進行方向をくるりと変えた。
「これ、どこへゆく」
三成の肩に乗る携帯は首を傾げる。そのフォルムを覆う包帯が風に揺れた。携帯なのに通話内容を聞いていなかったのかと呆れながら、三成は答える。
「刑部にお使いを頼まれた」
「この方向だとスーパーか」
「大根が足りないらしい」
「おでんは好かぬ」
「ぶり大根かもしれないだろう」
他愛もない会話をする彼らを、通行人たちは横目で見ながら通りすぎてゆく。携帯がユーザと会話をするのは珍しいことではないが、通行人たちが珍しがったのは携帯の方だ。
三成の携帯は不良品である。フォルムの傷はもちろん、様々な機能が役に立たない。ショップに持っていけば無料で交換してもらえる機種なのだ。
俯いた携帯に、三成はそっぽを向きながら呟いた。
「私は貴様がいい。それだけのことだ」
「……さようか」