神社パロ(三+吉)


 触らぬ神に祟りなし、お狐さまが大事に守る赤い社に触れることなかれ。指先がちょいとでも触れた時にはさあ大変、次の瞬間には首が飛んで地獄道行き。社に祀られし神よりも、恐るるべくはお狐さまなり。さぁそこのけそこのけお狐さまが通る。
 とまあそんな噂のおかげで、この神社へ丑の刻参りに訪れる不届き者はいない。ひと月に一度の満月の晩、社の真ん前に立つ狐の像は、堂々と本来の姿を現に晒した。高い霊力を持つゆえに半人半獣の形をとる、銀狐の美しい耳と尾を持つ青年の姿である。満月の光にその毛並を金色に輝かせながら、狐は社へと呼びかけた。

「刑部、刑部」

 それは古い役職の名であった。とても神を呼ぶ名ではなかったが、社に祀られているのは神は神でも不幸の神、人々の信仰心が薄れ祟ることのできる時を虎視眈々と待つ厄の神である。狐の呼びかけに、神はひひひと笑い声で答えた。

「もう満月か」
「『もう』ではない、『やっと』だ」
「そうか、そうか」



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