藍染の手によって引き起こされたその戦争は、最終的には藍染の敗北という形で終結した。戦禍にあっては両陣営ともに多大な被害を受けたが、護廷十三隊に関して言えば、救護隊の甚大な活躍もあり、命を落とした者はほとんどいなかった。
死んだのは藍染の手駒であった破面の多くと、彼に与していた市丸、東仙元隊長両名。市丸に関しては最後の最後で藍染に刃を向け、殺し合いを演じ、そうして藍染の手によってその命を絶やすこととなったが、それを知る者は多くない。そして、同じく藍染の手によって葬られた東仙の死の理由についても、知る者は護廷十三隊にひとりとしていなかった。
崩玉と融合した藍染はもはや不死であったが、護廷十三隊、特に浦原喜助と黒崎一護二名の活躍によって、その身を崩玉ごと封印された。後に四十六室によって、中央地下第八監獄・無間において、五感を封じられた状態で、二万年の投獄刑に処されることとなる。
空座町での決戦を終えた後で、虚圏にてその身を保護された四谷史帆は、意識の戻らないまま、四番隊の隊舎牢にて療養となった。白伏の類ではなく、強大な霊力をその身に受けたことによる衰弱だと診断された。不安定ながらも彼女の身体から検知された、彼女以外の何者かの霊圧も、それを裏付ける一つであった。
決戦から数日後。
それに最初に気がついたのは、定時確認で牢へやってきた四番隊の一席官であった。
ベッドに横たわっているはずの身体はそこにはなく、史帆の姿は牢から忽然と消えていた。どこを見渡しても霊圧の名残すらもなく、彼女がそこにいた痕跡の一切を、消し去って。
ベッドの上に乗せられた、綺麗に折りたたまれた毛布には、ぬくもりさえ残されていなかった。
(破面編 終)