◇
はあ。
電気を落とした寝室、布団の中で溜息をひとつ吐いた雅はちらりと部屋の角に視線を向けた。
化粧台の椅子に窮屈そうに座る五条が軽く手を振ってきたのが見えて、慌てて掛け布団を頭まで引き上げる。
「…、」
五条さんってば、言い方!
異性に夜を一緒に過ごすだなんて発言をされて、意識しない人間がいるならみてみたい。
未だに冷めない顔の熱を感じながら、あのあと1時間程度に及んだ五条の話をゆっくり整理し始めた。
まず、金曜日に五条が迷い込み、雅が意識を失ったのが午後八時くらい。
その後寝室に運ぼうとしてくれたが、先ほどの通り扉が繋がる時間帯に彼が開けると、彼の自室になってしまうことが判明し断念。
とりあえずソファへ寝かして、一旦自室へ帰ったらしい。
日付が変わって土曜日、零時過ぎに再度こちらに来ると、夜中の二時に五条の力が必要になる何かが起きた。
その後しばらく扉を開け閉めしながら見張っていたが、朝方四時以降にいきなり自室に繋がらなくなる。
そこで雅をベッドに運び、自らは家の外を探索。
その間も、何回か家と外を行き来して開け閉めは試していたらしい。
次に五条の自室に繋がったのが、夕方の四時以降。
あちらの任務の関係もあり帰ったが、日付が変わった日曜日には再び雅の部屋へ。
やはり、そこでも同じ時間ー…夜中の二時に問題があった。
検証のため、今度は朝方四時になる前に自室へ。
四時以降はやはりこちらへは繋がらず、日曜日は雅の掃除が一段落した夕方四時に訪問し、現在に至る。
「…、…」
話された内容をまとめると、重要事項は三つ。
1、行き来ができるのは五条のみ。
2、扉が繋がる時間は夕方四時から日付をまたいで朝方四時まで(五条がこちらに残るのは可能)。
3、夜中の二時に、五条の力を借りなければならない何かが起きている。
今回、雅が動揺した五条の問題発言は、3への対策のためだった。
詳しくはまた検証が終わってからね。と、はぐらかされたが、大体の予想はつく。
過ごした時間は短いが、五条が頭の回転が速く優秀な人材であることは確かだ。
仕事としてかもしれないが、赤の他人のためにここまでしてくれる人を、信じないわけにはいかない。
明日は仕事帰りにお菓子の材料でも買って帰ろう。
そう心に決めて、ゆるゆると意識を手放した。
2021/03/06