◇
学校帰り、鞄片手に雅は夜空を仰いだ。
最近急激に寒くなってきたとボンヤリと睫毛を伏せ、ブラウスの襟元を手繰り寄せる。
「…マフラー…マフラーがもう必要だろうか…」
唸るようにぼやくと、チラリと腕時計を確認した。
お祭り好きな学校が授業そっちのけでハロウィンパーティーなんてものを開催していたせいで、後片付けに手間取った。
体育祭に続いてあんな大掛かりなイベントをすれば疲れるに決まっている。
何かこう、癒されるものでもないかなあ。
すっかり日の落ちた薄闇の中を、意味もなく視線がさ迷った。
「−…?」
ふと視界が何かを捉え、反射的にその位置に首を固定する。
「何アレ」
大きな頭を抑え、よたよたと危なっかしい動きでこちらに歩みよるそれに、目を凝らした。
一見人間のようだが、視覚が脳に伝えた、その頭の形には疑問が残る。
「……かぼちゃ」
無意識でぽつりと空気に漏らした言葉通り、“それ”は正しく南瓜だった。
距離が近づき、その全貌が明らかになると、雅は納得したように頷く。
−なるほど、ハロウィンか。
嘲るような三角の目と複雑な口を確認するなり、本日の仮装パーティーを思い出して口元を緩めた。
この時間にやるのはそれはもう盛り上がるんだろうと、微笑ましくそれを見守る。
否、見守ろうと、した。
しかし南瓜を被る彼(体格的に推理)は余程不慣れだったらしい。
足元の大きな石に気付かず、そのまま盛大に躓いた。
ぐらりと傾く身体に瞳を見開く。
「危ない!」
考える隙などなく、鞄をほっぽりだしてその前に己の身体を滑り込ませた。
「へえ!?っおぉお」
「あ、」
−それが余計なお世話だったと理解したのは、事が済んでからだった。
突然真ん前に飛び込んできた雅に驚いて、彼は無事に取りかけた受け身を崩す。
彼女にぶつからないために進路を急遽変更したらしく後ろへ飛ぶが、逆効果だった。
彼を助けようとしていた雅の身体は前のめりに傾き、そのまま地面へと引き寄せられる。
「わ…!?」
「危ねぇ!」
何が起きたのか、脳の処理が追い付かなかった。
ふわりとした浮遊感の後に、感じる温度。
そっと瞼を上げると、そこには南瓜―ではなく、心配そうな“顔”がこちらを覗き込んでいた。
「すいやせんっ怪我はないですかいお嬢さん!」
「…ね、こ…?」
左目を囲う茶色が印象に残る。
焦げ茶混じりの黒髪から生える猫耳が何よりも目を惹いた。
−…ミケ、みたいだ。
昔飼っていた猫を思い出し、ゆったりと微笑む。
「あ、いやこれは、…!」
慌てたように耳を触りワタワタしていた彼だったが、雅のその表情に思わず固まった。
彼女を抱き込んだ拍子に頭から外れた南瓜を探すことも忘れて、彼女の笑みに魅入る。
てっきり、驚かれるものだと思ったのに。
−“妖怪"の猫又−良太猫は、ぱちぱちと目を瞬かせた。
人間が嫌いなわけではないが、面倒事は好まない。
だからこそなるべく人通りの少ない場所を選んで、通ってきたのだ。
しかし、被りモノをわざわざ頭に装備して移動していたのが裏目に出た。
彼の身の軽さなら、南瓜を抱えて屋根づたいで駆けた方が明らかに効率が良かっただろう。
本気のボケなのか、はたまた化猫組の組長を努め、賭事にプライドを持つ彼の血がさせたことなのか。
何にせよ、今の状況が色々な意味で予想外であることに変わりはない。
人間に姿を晒したことを悔やむより先に、規定外の彼女の反応に心臓が高鳴った。
「…あの?」
「!何でございやしょう!?」
「あはは!その口調、何処かの店主さんでもやってるんですか?」
まだ若いのに。
先程の笑みとは一変。
ケラケラ声を上げる彼女の言葉に疑問符を浮かべるものの、不快感はまるでなかった。
大人しそうな見た目に反して盛大に笑う姿に、惹き付けられる。
楽しそうに笑うお方だと、つられて瞳を細めた。
−うわ…。
そんな良太猫にキュンと謎のときめきを感じた雅だったが、同時に今の体勢に気付いて慌てる。
「っすいません私乗ったままで!重いですよね!」
「あ、そんな急いじゃいけねぇ。全然大丈夫でございやす」
焦って怪我する方が一大事だと、雅を落ち着かせてからゆっくり立ち上がらせた。
白い肌に、小さい手。
柔らかく揺れる亜麻色の髪に惚けるが、直ぐに我にかえってかぶりを振る。
対する雅はと言えば、改めて向かい合って立つことで判明したその事実に、ひとり悶えていた。
っ な に こ れ 可 愛 い … !
今までは遠目だったり抱え込んで貰ったりで気付かなかったが、猫耳の彼の背丈は雅よりも小さかった。
155pと高校生にしては小柄な雅だが、猫耳の分を足しても少し彼女には足りない。
見積もって145から150pくらいだろうか。
自分を助けてくれた頼もしさとのギャップに脈を速めながら、落ち着け落ち着けと静かに深呼吸をこなした。
苦し紛れに話題を探し、重大なことを思い出す。
「あ、あの、そういえば南瓜は!?」
「!そうでやした、アレがないと…そこらへんに転がってると思うんですがね」
雅の問い掛けに、良太猫もギョッとして辺りを見渡し始めた。
やはりあの南瓜はハロウィンパーティーには欠かせないのだろう。
申し訳ないと一緒に探そうと意気込んだ彼女の足下に、それは転がっていた。
灯台下暗しとはこのことか。
ニッと口角をあげた雅は南瓜をそっと持ち上げると、無防備に背中を向けている良太猫に忍び寄る。
いくら足音を消したところで、人間の彼女が猫である良太猫の五感を誤魔化せる筈もなかった。
自分への近付き方に首を傾げながらも振り返る。
「?見つかり、」
言葉は続かなかった。
「trick or treat!」
「うわあ!?」
いきなり突きつけられた南瓜に思わず仰け反る。
そのリアクションに満足したのか、悪戯っぽく歯を見せた雅がヒョッコリ顔を覗かせた。
「いい反応!」
「…思ったよりお茶目な性格のようで」
「へへ、よく言われる」
「でしょうね。で、さっきのはどういう…?」
「…………え」
思わぬ切り返しに、今度は雅がポカンとする番だった
まさか“ここまで”準備万端な人が、この決まり文句を知らないわけがない。
お菓子を持ってないからとぼけているのかとジッと見つめ返すが、本気らしかった。
何かおかしな事をいってしまったのかとタジタジな彼の様子に、あれぇと首を捻る。
「知らないんですか?…ハロウィンするんだよね、この南瓜」
「た、確かに“はろうぃん”するから来いとは言われてやすが。南瓜は各々持参とのことで作ってきた次第で」
「それ以外は何も聞いてない、と」
「?へい」
あちゃあと額に手を当てると、きょとんとした視線が返された。
彼を誘った人物もこのイベントに疎いのか、それとも敢えて伝えずのはっちゃけサプライズなのか。
どちらともとれるが、恩もある。
このまま行かせるよりかはと上着のポケットを弄った。
雅も今日ハロウィンを終えてきたばかりだ。
ルールに則った収穫はある。
「良かった、残ってた。−どうぞ」
「…へ?」
いきなり差し出された数個の飴玉に、どうすることもできずに呆ける。
まあ当たり前の反応だな。
ひとつ頷くと、とりあえず受け取って貰おうと、彼の羽織のポケットに忍ばせた。
「自分で食べちゃダメですよ。もし、誰かにさっきのセリフを言われたらあげて下さいね」
「え、あげるんですかい?」
「そう。寧ろ言ったってもいい!普通お化け役が言うんですから」
「??はあ…」
意味は理解し難かったが、心なしか顔を爛々と輝かせて語る雅に、顔が綻ぶ。
「−…有り難く頂戴しやす」
「っ〜」
嬉しそうにニヘリと笑んだ良太猫に、無意識に出た手を死ぬ気で引っ込めた。
「あ、」
ぶねぇえええ可愛いなコンチキショーっっっ…!
抱き締めるべく伸ばされたであろう己の両手を理性で制し、腰の後ろで組む。
そんな雅の影の苦労も知らず、良太猫は思い付いたように声を弾ませた。
「あ、何なら一緒にどうですかい?若ならきっと歓迎してくれますぜ」
妖怪にも人間にも平等な尊敬する人物を思い浮かべながら、雅を見つめる。
彼女がいてくれたらきっともっと楽しい集まりになるだろうと、純粋な気持ちでその肩に手をかけた。
良太猫を気に入った雅に断る理由などなかったが、何かと彼にツボをつかれている身としては、これ以上心臓がもつ自信がない。
一度体制を立て直してリベンジしようそうしよう。
“若”という普段なら聞き逃さないであろう単語さえも受け流してそう決心すると、ぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい、せっかくのお誘いなんだけど今日は無理」
「…そうですかい。残念だけどそりゃあしょうがねぇや」
言葉通り残念そうに眉を下げて、尚笑ってくれる姿に胸うたれながら、パッと顔を上げる。
「ね、ここら辺歩いてたらまた会えるかな」
「!もちろんっ。何なら毎日歩いてるんで、見掛けたらまた声掛けて下せえ!」
「おお…」
意外に食いつきのよい切り返しに大きく睫毛を上下させるものの、次の瞬間には眩しいくらいの笑顔を見せた。
「約束ね!」
笑う南瓜も思わず笑んだ、巡り合わせに乾杯
(仮装二段構えだなんて、凝ってるなあ。耳も本格的)
(若、暫くは本家に通わせて頂きます)
また別の話、ハナシ。
学校帰り、鞄片手に雅は夜空を仰いだ。
最近急激に寒くなってきたとボンヤリと睫毛を伏せ、ブラウスの襟元を手繰り寄せる。
「…マフラー…マフラーがもう必要だろうか…」
唸るようにぼやくと、チラリと腕時計を確認した。
お祭り好きな学校が授業そっちのけでハロウィンパーティーなんてものを開催していたせいで、後片付けに手間取った。
体育祭に続いてあんな大掛かりなイベントをすれば疲れるに決まっている。
何かこう、癒されるものでもないかなあ。
すっかり日の落ちた薄闇の中を、意味もなく視線がさ迷った。
「−…?」
ふと視界が何かを捉え、反射的にその位置に首を固定する。
「何アレ」
大きな頭を抑え、よたよたと危なっかしい動きでこちらに歩みよるそれに、目を凝らした。
一見人間のようだが、視覚が脳に伝えた、その頭の形には疑問が残る。
「……かぼちゃ」
無意識でぽつりと空気に漏らした言葉通り、“それ”は正しく南瓜だった。
距離が近づき、その全貌が明らかになると、雅は納得したように頷く。
−なるほど、ハロウィンか。
嘲るような三角の目と複雑な口を確認するなり、本日の仮装パーティーを思い出して口元を緩めた。
この時間にやるのはそれはもう盛り上がるんだろうと、微笑ましくそれを見守る。
否、見守ろうと、した。
しかし南瓜を被る彼(体格的に推理)は余程不慣れだったらしい。
足元の大きな石に気付かず、そのまま盛大に躓いた。
ぐらりと傾く身体に瞳を見開く。
「危ない!」
考える隙などなく、鞄をほっぽりだしてその前に己の身体を滑り込ませた。
「へえ!?っおぉお」
「あ、」
−それが余計なお世話だったと理解したのは、事が済んでからだった。
突然真ん前に飛び込んできた雅に驚いて、彼は無事に取りかけた受け身を崩す。
彼女にぶつからないために進路を急遽変更したらしく後ろへ飛ぶが、逆効果だった。
彼を助けようとしていた雅の身体は前のめりに傾き、そのまま地面へと引き寄せられる。
「わ…!?」
「危ねぇ!」
何が起きたのか、脳の処理が追い付かなかった。
ふわりとした浮遊感の後に、感じる温度。
そっと瞼を上げると、そこには南瓜―ではなく、心配そうな“顔”がこちらを覗き込んでいた。
「すいやせんっ怪我はないですかいお嬢さん!」
「…ね、こ…?」
左目を囲う茶色が印象に残る。
焦げ茶混じりの黒髪から生える猫耳が何よりも目を惹いた。
−…ミケ、みたいだ。
昔飼っていた猫を思い出し、ゆったりと微笑む。
「あ、いやこれは、…!」
慌てたように耳を触りワタワタしていた彼だったが、雅のその表情に思わず固まった。
彼女を抱き込んだ拍子に頭から外れた南瓜を探すことも忘れて、彼女の笑みに魅入る。
てっきり、驚かれるものだと思ったのに。
−“妖怪"の猫又−良太猫は、ぱちぱちと目を瞬かせた。
人間が嫌いなわけではないが、面倒事は好まない。
だからこそなるべく人通りの少ない場所を選んで、通ってきたのだ。
しかし、被りモノをわざわざ頭に装備して移動していたのが裏目に出た。
彼の身の軽さなら、南瓜を抱えて屋根づたいで駆けた方が明らかに効率が良かっただろう。
本気のボケなのか、はたまた化猫組の組長を努め、賭事にプライドを持つ彼の血がさせたことなのか。
何にせよ、今の状況が色々な意味で予想外であることに変わりはない。
人間に姿を晒したことを悔やむより先に、規定外の彼女の反応に心臓が高鳴った。
「…あの?」
「!何でございやしょう!?」
「あはは!その口調、何処かの店主さんでもやってるんですか?」
まだ若いのに。
先程の笑みとは一変。
ケラケラ声を上げる彼女の言葉に疑問符を浮かべるものの、不快感はまるでなかった。
大人しそうな見た目に反して盛大に笑う姿に、惹き付けられる。
楽しそうに笑うお方だと、つられて瞳を細めた。
−うわ…。
そんな良太猫にキュンと謎のときめきを感じた雅だったが、同時に今の体勢に気付いて慌てる。
「っすいません私乗ったままで!重いですよね!」
「あ、そんな急いじゃいけねぇ。全然大丈夫でございやす」
焦って怪我する方が一大事だと、雅を落ち着かせてからゆっくり立ち上がらせた。
白い肌に、小さい手。
柔らかく揺れる亜麻色の髪に惚けるが、直ぐに我にかえってかぶりを振る。
対する雅はと言えば、改めて向かい合って立つことで判明したその事実に、ひとり悶えていた。
っ な に こ れ 可 愛 い … !
今までは遠目だったり抱え込んで貰ったりで気付かなかったが、猫耳の彼の背丈は雅よりも小さかった。
155pと高校生にしては小柄な雅だが、猫耳の分を足しても少し彼女には足りない。
見積もって145から150pくらいだろうか。
自分を助けてくれた頼もしさとのギャップに脈を速めながら、落ち着け落ち着けと静かに深呼吸をこなした。
苦し紛れに話題を探し、重大なことを思い出す。
「あ、あの、そういえば南瓜は!?」
「!そうでやした、アレがないと…そこらへんに転がってると思うんですがね」
雅の問い掛けに、良太猫もギョッとして辺りを見渡し始めた。
やはりあの南瓜はハロウィンパーティーには欠かせないのだろう。
申し訳ないと一緒に探そうと意気込んだ彼女の足下に、それは転がっていた。
灯台下暗しとはこのことか。
ニッと口角をあげた雅は南瓜をそっと持ち上げると、無防備に背中を向けている良太猫に忍び寄る。
いくら足音を消したところで、人間の彼女が猫である良太猫の五感を誤魔化せる筈もなかった。
自分への近付き方に首を傾げながらも振り返る。
「?見つかり、」
言葉は続かなかった。
「trick or treat!」
「うわあ!?」
いきなり突きつけられた南瓜に思わず仰け反る。
そのリアクションに満足したのか、悪戯っぽく歯を見せた雅がヒョッコリ顔を覗かせた。
「いい反応!」
「…思ったよりお茶目な性格のようで」
「へへ、よく言われる」
「でしょうね。で、さっきのはどういう…?」
「…………え」
思わぬ切り返しに、今度は雅がポカンとする番だった
まさか“ここまで”準備万端な人が、この決まり文句を知らないわけがない。
お菓子を持ってないからとぼけているのかとジッと見つめ返すが、本気らしかった。
何かおかしな事をいってしまったのかとタジタジな彼の様子に、あれぇと首を捻る。
「知らないんですか?…ハロウィンするんだよね、この南瓜」
「た、確かに“はろうぃん”するから来いとは言われてやすが。南瓜は各々持参とのことで作ってきた次第で」
「それ以外は何も聞いてない、と」
「?へい」
あちゃあと額に手を当てると、きょとんとした視線が返された。
彼を誘った人物もこのイベントに疎いのか、それとも敢えて伝えずのはっちゃけサプライズなのか。
どちらともとれるが、恩もある。
このまま行かせるよりかはと上着のポケットを弄った。
雅も今日ハロウィンを終えてきたばかりだ。
ルールに則った収穫はある。
「良かった、残ってた。−どうぞ」
「…へ?」
いきなり差し出された数個の飴玉に、どうすることもできずに呆ける。
まあ当たり前の反応だな。
ひとつ頷くと、とりあえず受け取って貰おうと、彼の羽織のポケットに忍ばせた。
「自分で食べちゃダメですよ。もし、誰かにさっきのセリフを言われたらあげて下さいね」
「え、あげるんですかい?」
「そう。寧ろ言ったってもいい!普通お化け役が言うんですから」
「??はあ…」
意味は理解し難かったが、心なしか顔を爛々と輝かせて語る雅に、顔が綻ぶ。
「−…有り難く頂戴しやす」
「っ〜」
嬉しそうにニヘリと笑んだ良太猫に、無意識に出た手を死ぬ気で引っ込めた。
「あ、」
ぶねぇえええ可愛いなコンチキショーっっっ…!
抱き締めるべく伸ばされたであろう己の両手を理性で制し、腰の後ろで組む。
そんな雅の影の苦労も知らず、良太猫は思い付いたように声を弾ませた。
「あ、何なら一緒にどうですかい?若ならきっと歓迎してくれますぜ」
妖怪にも人間にも平等な尊敬する人物を思い浮かべながら、雅を見つめる。
彼女がいてくれたらきっともっと楽しい集まりになるだろうと、純粋な気持ちでその肩に手をかけた。
良太猫を気に入った雅に断る理由などなかったが、何かと彼にツボをつかれている身としては、これ以上心臓がもつ自信がない。
一度体制を立て直してリベンジしようそうしよう。
“若”という普段なら聞き逃さないであろう単語さえも受け流してそう決心すると、ぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい、せっかくのお誘いなんだけど今日は無理」
「…そうですかい。残念だけどそりゃあしょうがねぇや」
言葉通り残念そうに眉を下げて、尚笑ってくれる姿に胸うたれながら、パッと顔を上げる。
「ね、ここら辺歩いてたらまた会えるかな」
「!もちろんっ。何なら毎日歩いてるんで、見掛けたらまた声掛けて下せえ!」
「おお…」
意外に食いつきのよい切り返しに大きく睫毛を上下させるものの、次の瞬間には眩しいくらいの笑顔を見せた。
「約束ね!」
笑う南瓜も思わず笑んだ、巡り合わせに乾杯
(仮装二段構えだなんて、凝ってるなあ。耳も本格的)
(若、暫くは本家に通わせて頂きます)
また別の話、ハナシ。