◇
「オーイ」
校門を出たところでかかった声に、雅は立ち止まった。
むすっとした表情で振り返る。
「何か用?」
「相変わらずつれねーなー。一人?」
「他に誰かいるように見えるなら病院行った方がいいんじゃない?」
「キツっ!え、いつもにも増してキツくね?」
ガンと反応するものの、すぐにいつもの調子で笑って隣に並ぶ高尾に構わず、雅は歩き始めた。
高尾もそれに怒るでもショックを受けるでもなく、さも当然のように横を歩く。
分かってる。
最近、彼女はわざと遅くまで残り、親友と先輩を一緒に帰らせていること。
気を遣わせないように、用事だと称してずっと図書室で時間を潰していること。
相変わらずの不器用ぶりに、思わず笑った。
「…何か面白い事でもあるわけ?」
「雅ちゃんの顔」
「凶暴犬に追いかけられてしまえ」
「ぶっ…何その中途半端な厭味!」
どうせ言うならもっとキツイ例を出せばいいのに。
優しい雅らしい例えだ。
きっと彼女にとっては精一杯の厭味なのだろう。
腹を抱えて声を上げれば、隣を行く雅のスピードが上がる。
その後ろ姿に口を釣り上げて。
「オレ、最近帰り一人なんだわ」
「だから?」
雅の、鞄を持つ手に力が入ったのが見てとれて、高尾は楽しげに目を細めた。
一歩で早足の彼女に追いつくと、その力の入った手をとる。
「寂しーから、これから一緒に帰ろーぜ」
「…ッ」
更に早くなる足どり。
微かに握り返された手と真赤な耳に、抱きしめそうになるのを堪えた。
顔も見れない。
(オマエが行動で示してくれる分、オレは言葉で示してやるよ)
(本当は会えるのを期待してたなんて、言えない。口が裂けても言えない)
大好き。
「オーイ」
校門を出たところでかかった声に、雅は立ち止まった。
むすっとした表情で振り返る。
「何か用?」
「相変わらずつれねーなー。一人?」
「他に誰かいるように見えるなら病院行った方がいいんじゃない?」
「キツっ!え、いつもにも増してキツくね?」
ガンと反応するものの、すぐにいつもの調子で笑って隣に並ぶ高尾に構わず、雅は歩き始めた。
高尾もそれに怒るでもショックを受けるでもなく、さも当然のように横を歩く。
分かってる。
最近、彼女はわざと遅くまで残り、親友と先輩を一緒に帰らせていること。
気を遣わせないように、用事だと称してずっと図書室で時間を潰していること。
相変わらずの不器用ぶりに、思わず笑った。
「…何か面白い事でもあるわけ?」
「雅ちゃんの顔」
「凶暴犬に追いかけられてしまえ」
「ぶっ…何その中途半端な厭味!」
どうせ言うならもっとキツイ例を出せばいいのに。
優しい雅らしい例えだ。
きっと彼女にとっては精一杯の厭味なのだろう。
腹を抱えて声を上げれば、隣を行く雅のスピードが上がる。
その後ろ姿に口を釣り上げて。
「オレ、最近帰り一人なんだわ」
「だから?」
雅の、鞄を持つ手に力が入ったのが見てとれて、高尾は楽しげに目を細めた。
一歩で早足の彼女に追いつくと、その力の入った手をとる。
「寂しーから、これから一緒に帰ろーぜ」
「…ッ」
更に早くなる足どり。
微かに握り返された手と真赤な耳に、抱きしめそうになるのを堪えた。
顔も見れない。
(オマエが行動で示してくれる分、オレは言葉で示してやるよ)
(本当は会えるのを期待してたなんて、言えない。口が裂けても言えない)
大好き。