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だがしかし手足が棒のようだ


 白んだ空を見上げながら、肩から滑り落ちかけているマフラーを直した。
 ツルツルした上着を着用しているためか本日数度目のそれを、見かねたのだろう。
 隣から伸びてきた手が、マフラーの端を捉える。



「−少しじっとしていて下さい」



 きゅっと緩く括られたそれに、少し顔を埋めるようにして笑んだ。
 キツすぎず、暖かく、センスもいい。
 相変わらず何でもできる人だと視線だけで見上げれば、爽やかな笑顔が返される。



「どうです?」

「ん、丁度いいです。ありがとうございます安室さん」

「どう致しまして。大分寒くなってきましたからね」

「そろそろ雪も降りそうですよね」

「雅さんは雪が楽しみですか?」

「見てる分には…好きです」

「なるほど」



 クスリと空気が揺れるのを感じ、じんじんと耳元に熱が集まった。
 彼の隣を歩くのはいつになっても慣れない。
 未だに顔もまともに見れず、自分から詰められない距離感にもどかしさを感じる。

 空模様同様に真っ白に染められる頭の中を叱咤して、何とか会話を繋げようと唇を開いた。



「…そういう安室さんは、どうなんですか?」

「ああ、雪ですか?うーん…まあ好きとも嫌いとも言い難いですけど、…、」

「…、けど?」



 一呼吸の沈黙に思わず顔をあげれば、ばっちりと視線が出逢う。
 待ってましたとばかりに細められた双眼から、瞳も反らせずに。



「−照れ屋な女性と手を繋ぐ為にはいい口実になるかもしれませんね」

「…え、あ…」



 早く降ればいいですね。

 照れも感じない自然さでニコリと前髪を揺らした彼に、数秒惚ける。
 かじかんだ指先を、握り込んだ。







だがしかし手足が棒のようだ


(いいい今から手袋でも見に行きませんか…!)
(あれ、寒いなら直ぐにでも繋ぎます?)


じんぽっか、冷えた指を温めるのは。




2013.12.31


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