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 部活終わり、仲間と別れてぼんやり歩く帰路。
 影めいた空気を、着メロが震わせた。

 この時間帯にくる連絡は相手が限られてくる。
 反射的に脳裏に浮かんだ顔に口元を崩して、伊月は画面を開いた。

 予想通りの送り主と内容に、自然と足を止める。



“部活お疲れさま。空見て”



 空を仰ぐと、なるほど、ここ最近彼女が好む光景が視界を占めた。
 これは、こちらにメールをせざるを得なかっただろう。
 顎に指先を添えて少し思案したのち、ピンと豆球を閃かせた。



“星が欲しい!キタコレ!”



 送信画面を見届けて、そのままの状態で待つこと五分。
 彼女の返信は、基本的に急行だ。
 新着メールの皆無と時間を確認した伊月は、今までの静止が嘘のように指を滑らせる。



“ごめん雅、真面目に答えるから怒んないで”

“空を見てよ伊月”



 送信後、今度は約十秒で届いた反応に、ホッと表情を緩ませた。
 それから、眉を下げて笑って。

 やっぱり、可愛くて仕方がない。

 通信機械を前に、正座で唸る姿が見えるようだ。
 再度、視線を天に移して、彼女が望んでいるであろう本命の言葉を打ち込んだ。



“見てるよ。今夜も、月が綺麗ですね”



 送信ボタンから離した指は、そのまま通話ボタンへ滑らせる。
 想像に違わず、五秒後には聞き慣れたソプラノが耳の孔に侵入した。



『−私もそう思う!』

「…雅、」

『なに?』

「明日空いてる?」

『空いてる。デートしよう』

「いつも言ってるけどそこオレに言わせて!」







月を透かして想いを通す


(ちなみにこのやり取り、もう十六回目になるんだけどね?)
(だって普通に言うのなんて恥ずかしいし言ってもらうのも恥ずかしいし)


秘めることこそ、美しい。