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 いつもと少しの間違い探し。
 緩めに後ろに束ねられたラベンダー色に、ほぅっと熱のこもった息が漏れる。



「…やばい」

「どうしたの飴ちんー」



 ぽつりと隣から拾った呟きに、紫原は視線をズラした。
 うまい棒をサクサクと消費する手は止めずに、コテンと頭が傾く。

 きゅんっ。

 身体の大きさと容姿に反した、幼さ満点の動作にアイテム。
 相変わらずこのギャップが堪らん。
 加えて本日はあまりお目にかかれない括りヘアだ。

 左胸から聴く擬音に従って、雅はその温度にしがみついた。
 大きめのカーディガンからふわりと香るのは、恐らく彼が先程口にしていたチョコレートの残り香だろう。



「飴ちん寒いのー?」

「いやいやお陰様でほくほくです。君は私の心のカイロ」

「意味分かんないんだけど」

「それでいいんですでもそろそろ呼吸困難寸前!」

「元気そうじゃん」

「もうっその不思議そうな目が堪んない!好き!あ、心臓痛くなってきた



 胸元を抑えて悶える雅を暫く見つめたのち、最後のひとかけらを消費した口を開く。



「それって、オレのこと好きだと苦しいってこと〜?」

「そんな感じ。私にとっては君と過ごす毎日が戦争だよ敦クン」

「ふーん…だったらこれからも大変だねー」

「はい?」



 彼らしくない、やけに含みのある物言いに、反射的に顔を挙げた。

 今まで紫原の纏う毛糸に押し付けていた頬が、間に割り込む空気によって冷やされる。
 更に、そこにワンポイントで伸びてきた彼の冷たい指先が肌を掠め、思わず身震いした。
 そのまま雅の片頬を親指と人差し指の二本で挟み込んだ紫原は、ゆるりと笑む。

 むにむにと摘まれる頬に、意識は向かなかった。



「−だってオレ、飴ちん離す気ねーし」

「…!」



 どっきゅーん。

 完全に左胸を貫いた大砲に固まる雅を、長いリーチで容易く抱え込む。
 普段は自分からぐいぐいくるくせに、相変わらず受け身は苦手らしい。
 あわあわとキョドり始めた腕の中の温度に、無意識的に口角が上がった。








楽になんてしてやんない


(この妖精は私の心臓止める気か)
(オレの心臓もわりとヘンなんだけどー)


愛、相、ほかろん。