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 ああ。やっぱり、ない。

 出会うなりひとしきり視線を動かした雅は、大きく瞳を瞬かせて緑間を見上げた。



「ね、真ちゃん」

「その呼び方はやめるのだよ」

「緑間さん家の真太郎君」

「…さっきの呼び方でいい」

「初めからそう言ってくれればいいのにー。ところで今日のラッキーアイテムは?」



 くるりくるりと彼の周りを周りながら、わざとらしく首を傾げてみせる。
 そんな様子にあからさまに眉間を寄せた緑間は、左手にもつ奇妙なうさぎを掲げてみせた。
 相変わらず彼の持ち歩くそれは存在感が桁違いだ。



「見て分からないのか、このぬいぐるみなのだよ」

「…うそつき」

「何を根拠に、っ!…」

「あ、鳥のフン。ツいてないね?」

「…、たかが鳥のフンだろう。寧ろこの確率での命中率は運がいいことの裏返し…」



 肩に落とされた白色を素早く出したティッシュで拭おうとした瞬間に、自分の影に被る影を目撃する。

 持ち前の反射神経を発揮する前に、隣から華奢な腕が伸びて絡んだ。
 その細さからは想像もできない力で引き寄せられ、次の瞬間には足下に飛び散る鉢植えの破片。
 ついさっきまで自分の存在していた場所に落ちたそれにはさすがに血の気がひいた。



「っさっきのは危なかったのだよ!助かった」



 感謝の意を込めてその丸い頭を見下ろすと、それに合わせて見上げてくる大きな双眼がキラキラ笑う。



「らしくないことするからだよ。ラッキーアイテムはやっぱ持たなくちゃね」

「…いや、今日もこの通り人事を尽くして−、」



 再度掲げたうさぎが彼女の手にさらわれたかと思うと、リアクションをとる前に代わりに掌に落とされた無機質な温度。
 それを認識した瞬間に、息と共に言葉を呑み込んだ。
 一瞬時間が止まり、次の瞬間には持たされたそれを放り出し、雅の両手を奪ってその状態を確認する。
 血が通っているのか不思議なくらいの冷たさにはもう驚かなくなった。

 傷一つない滑らかな肌に異常がないのを見届けたのち、咎めるようにその色彩を見返す。



「…何故オマエがこんなモノを持っているのだよ。身体に障ったらどうする」

「やだなあ真ちゃん、いつの時代の話よ。私たちも時代に合わせて進化してんの。今時の吸血鬼はこんなものでめげません!」



 ケラケラと太陽のような明るさで笑い声をあげると、彼が先程放り投げた十字架を拾ってつきつけた。







優しきキミに幸あれ!


(おは朝は私も見てるんだから。こんなことだろうと思った!やっぱり大好き)
(いくらおは朝だろうが、この人を遠ざける可能性のある物を持ち歩けるはずがないのだよ)


きらり、ひかる。