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06




(06.大丈夫/吹染吹)








「大丈夫って言葉はね、他人に平気かどうかを尋ねるための言葉じゃないんだよ」

「いきなりかよ‥‥」

「自分にまだいける、まだやれるっていう暗示をかける言葉なんだ。この意味、わかる?」

「さぁな」

「怪我したときとかに大丈夫だからって言ってる人は、ほとんどの場合大丈夫じゃないってこと」

「じゃあ怪我したときに大丈夫かって聞かれたらどうすりゃいいんだ」

「うーん‥‥‥だから、大丈夫かって聞く方がまずおかしいんだよ。例えばさ、サッカーをしていて怪我をしたとする。足が動かないくらいの怪我。そのとき、大丈夫かって聞かれたらどう答える?」

「大丈夫だから気にするな」

「ほら、ね。大丈夫かって聞くのは『大丈夫でいてほしい』っていう願望があるからなんだ。そして、聞かれた方も自分に暗示をかける。そして怪我はどんどん悪化していく‥‥‥」

「んなの大袈裟すぎっだろ」

「少し大袈裟かもしれないけど‥‥いつか自分の身に降り懸かるかもしれない」

「とにかく、怪我しなきゃいいだけだ」

「そう、だね。うん」

「‥‥ったく、しゃきっとしろよ、しゃきっと!」

「‥‥‥ありがとう」







あの時あいつに言われたことが、今となっては嫌でもわかる。
自分に大丈夫だと言い聞かせても何も変わりはしないのに、大丈夫だから平気だからサッカーをやらせてくれと懇願した。
一体誰に?
それは、きっと仲間達にでも監督にでもない。オレ自身に懇願していたのだろう。
あいつの言った通りだった。
大丈夫という言葉は希望の言葉でもあるわけだが、自分を塗り固めて無理矢理補強しようとする意思を表した言葉とも取れる。
この言葉を振りかざしすぎたオレは、自ら自分の首を絞めることになった。
あの時無理をせずにいたら、オレの怪我はここまで酷くならずに済んだのだろうか。サッカーが出来るほどとはいかないが、一緒に着いていくことなら出来たかもしれない。

結局、オレの選択が正しかったのかどうかはわからない。
だが一つ確かなのは、あいつがオレを見て「ごめん」と謝ったことだった。





(なんでお前が謝るんだよ。オレが大丈夫って言ったら大丈夫‥‥‥そうだろ?)



(090727)

***
「ごめん」はアニメで言ってたものではなく、二人で話した時かなんかの「ごめん」であってほしいです。
最後の「大丈夫」も怪我のことではなく、オレはお前がいなくても大丈夫だしお前はオレがいなくてもエースなんだから平気だろ?的なノリで。
説明しないとわからないような文章ですみません\(^o^)/