(01.目を背ける/源佐久)
「なぁ、俺のこと好きか?」
「別に普通」
はらり、はらり。 雑誌をめくる音がする。 きっと頭の中は俺の話でいっぱいいっぱいで、内容なんて理解出来ていないに違いない。 その証拠に、ほら。目が泳いでいる。
「俺はお前が好きだ」
「で、何が言いたい?」
呆れ顔で雑誌から目を離し、俺をその鋭い瞳で捉える。 表情にあまり出てはいないが、内心かなりドキドキしていることだろう。 ポーカーフェイスが得意な我がチームの優秀な参謀も、こういうことには不慣れらしい。
「お前は、俺のこと好きか?」
「‥‥‥だから普通」
「嫌いではない、と」
「万一、嫌いだったら今この空間に一緒にいるはずがないな」
「どちらかというと好き?」
「しつけぇ」
「佐久間」
「‥‥‥んだよ」
「キス、してもいいか?」
「‥‥‥‥」
机の反対側から身を乗り出して、そっぽを向いた顔を引き寄せる。 唇がくっついて、はなれた。
無言で目を背けるのは君の肯定の合図
(090723)
|