稲妻sss | ナノ
 




(恋に憧れ愛に絶望するとある夢見人の至極退屈な話/グランとガゼル)








「恋と愛の違いってなんだと思う?」

「‥‥‥‥」

「僕が思うに、恋と愛は同時に成立し得るものだと思うんだ。でも、僕には恋しいという気持ちと愛しいという気持ちの違いがわからない」

「それで、私に聞くと」

「そう、さっきバーンには軽くあしらわれてしまったしね」

「私も軽くあしらって済ませたいのだが」

「君なら知っていそうだなと思って聞いたんだけど、どう?」

「恋愛なんてもの、今の私には不必要な要素でしかない」

「不必要な要素だからといって、自分から排除しきれるかは別の話。違うかな、ガゼル」

「‥‥‥‥」

「僕が気付かないとでも?」

「‥‥‥恋は、他人に向けるような感情ではない。恋をしている自分に恋情を抱いているにすぎない。だから、恋が美しいものだなどと人々は睦言を叫ぶ」

「ああ、なるほど‥‥確かにそれは一理あるね。なら、愛は?」

「愛は、醜い。それこそ醜い感情が全て詰まったといっても過言ではないだろう。黒い欲望が身体を駆け巡る。しかも、底がない」

「へえ、君の考える恋と愛は一般常識的なそれとは随分掛け離れているようだけど」

「私に一般常識的な答えを求めてどうにかなるとでも?」

「まさか、僕たちに一般常識なんて通用しないからね」

「で、まだ何かあるのか」

「いや、おかげで面白い話が聞けた。そうだ、君には今愛しい人はいるの?」

「‥‥‥ぐちゃぐちゃに泣かせて服従させて、私のことしか見えないようにさせたい奴なら、一人」





「奇遇だね、僕もだよ」



(背に向けて投げられた言葉は、どこか笑みを含んでいて、気味が悪いことこの上なかった。何故だろう、自室へ戻るはずだった私の足は、違う場所へと歩みを進めていた。)


(091031)

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うん、グランきもい(←褒め言葉
ガゼルは自己完結しちゃうタイプだと思います