稲妻sss | ナノ
 




(恋に恋をして愛に溺れ死ぬ誰かさんによる至極滑稽な話/グランとバーン)








「失恋はチョコレートより苦い」

「チョコレートは甘いだろうが」

「ビターチョコレートの話だよ」

「で、いきなりなんなんだ。失恋がどうのとか、とうとう頭でも狂ったか?」

「酷い言い分だね。生きとし生けるもの、一度くらいは恋情を持つものだろう?」

「へえ、そうかよ」

「随分と興味なさそうじゃないか」

「実際興味ねーしな」

「恋の行方とか、誰に対してとか、気にならない?」

「全く、毛ほども。だいたい最初に失恋がどうのこうのって言ってたじゃねえか」

「失恋したからといっても、そのあとに失恋の話をするとは限らないよ」

「あれだろ、雷門のオキニイリ」

「どうしてそう思う?」

「あんた、ぞっこんだろうが」

「円堂くんのことはもちろん好きだよ、それが恋情でも愛情でもなんにしろ、ね」

「‥‥‥何が言いたい」

「ねえ、バーン」

「んだよ」

「恋しいと思った人に恋をして、愛しいと思った人に愛をあげるのはいけないことなのかな」

「それ、そこら辺の女に聞いてみろ。多分『サイテー!』って言われるぜ」

「バーンに聞いてるんだよ」

「知らねえ、俺に聞くな」

「じゃあ、南雲に聞いてるんだよ」

「意味わからん」

「わからなくていい、それでいい。それこそ、始まりが終わりにならないための唯一の逃げ道なんだから」





(心底楽しそうに告げて踵を返した彼が言ったことは、俺には到底わかりえないことだった。だが、至極上機嫌な彼の後ろ姿を見て、少しだけ興味が湧いたのも、紛れも無い事実だ。)


(091028)

***

グランが愛とか恋とかについて電波気味に語ってたらキモくね?と思ってたらいつの間にか指が動いていました。
ガゼル編もやりたい