(花火の話/一半)
「さむい」
「うん」
「上着貸そうか、とかないのかよ」
「上着、貸そうか」
「もうおそい、馬鹿」
「とか言いつつ君はオレの上着を引ったくるんだね」
「だって寒い」
「オレも寒いよ」
「俺はもっと寒い」
「何を根拠に‥‥」
「あ、」
「上がった」
「綺麗、なのかな」
「‥‥‥え?」
「わかんないんだ。花火って、綺麗なのかな」
「‥‥‥‥」
「花火なんて、終わった後が虚しくなるだけなのに」
(大輪の花が咲く空を見上げながら、そう呟いた横顔が今にも泣きそうで、寒さも忘れて君を見つめた。星のない星空に次々と打ち上がっていく花火が、初めて滑稽に思えた夜だった。)
(091018)
*** 花火が終わった後の喪失感が、嫌いです。 たまには半田に振り回される一之瀬もいいじゃない。
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