頂上へ辿りつくと、激しい光が噴出しているのを目撃する

険しい道のりだったため息を整えている彼らを置いて、ミクニはその場所へと近づいた


(これは…っ)


光から感じるのは、強い精霊の力

目的の場所が此処ならば、国の横暴が精霊が消えている事と関連していると言う事


(何で、こんな事が…この国の上の人間は、一体何を?それに、この感覚は)


危険だと知らせる胸の動悸に、ミクニは歯を噛みしめる


(…早く、止めないと)


己が知る世界の危機が過り、今目の前で起こっている事が結びつく


「行こう。みんなを助けなきゃ!」

「ああ。他に手はない」

「なかなか度胸がおありだ」

「見かけによらずな」


傍らでジュード達がこの下へと飛び降りる決意をしていた


「あんたは、どうすんだ?」

「もちろん、行くよ」


物想いに耽っていたミクニにアルヴィンが近づいてきた

近くでエリーゼも行く事を決め、この場にいる全員が行く事となる


「…皆さん宜しいですね。では、参りますよ!」


エリーゼの手を握ったローエンは懐からナイフらしきものを取り出すと、噴出する光の上へと投げる

すぐに魔方陣が組み上がり、彼らを乗せ、穴へと降下して行く

小さなエリーゼが落ちてしまわないように、彼女の後ろにいたミクニは、ぎゅっと拳を握った

精霊にとって毒のような力は、始祖の隷長の端くれであるミクニにとってもいいものではなかった

だからこそ、この力を生み出す原因を破壊しなければならない事がわかる


「見えた!アルヴィン!」


光の中で何かが見える

ミクニが瞳を凝らすと、何らかの石が中心に座していた

魔方陣を展開し、この力を作動させているモノだと察する

その核をアルヴィンとジュードが壊そうと試みている際、ミクニは声が聞こえた気がした

直後、貫く音が響き、嵐のように吹いていた精霊力も止んだ

ミクニ達が魔方陣から降り立つと、掴まっていた人達が出てくる


「…マナを強制的に奪われたんだ」

「えっ?マナを…?」

「うん。ここにある機械は、人からマナを奪うんだ」

「だから…精霊も…」

「え?今、精霊って」

「いや、何でもないよ」


衰退した人達の様子に悩んでいたが、ジュードの言葉に納得した

僅かにだが、今も尚、この空間はマナが多く濃い


(恐らく精霊も強制的に捕捉されてしまう程の力……さっきの声と言い、この機械。でも、まさか…そんな)


まだ不確かだったが、出てくる答えに頭が痛くなりそうだった

ミクニはもう起動しなくなっただろう機械を見上げた後、地面に視線を滑らす

中心にアルヴィンに破壊され、破片と化した核が無残にばら撒かれている

その場所へとミクニは赴こうとするが、届いた違和感に思わず足を止めた


「危ない!下がれ!」


見上げた瞬間、眩い白い光が溢れて来ていた

皆が危機を察し身構える中、ミクニは言葉を失う

その間にも光は強くなり、次第に形を創り出す

現れたのは、光華を放つ蝶にも似た巨大な虫


「何こいつ…っ!?」

「来るぞ、構えろ!!」


(あれは…っ)


一斉に武器を構え、ミラ達が他の者たちを守るべく、立ち向かう


「これは…!…強力な精霊術を纏っています!」

「こいつを生むのがやつらの目的か!?」


光の物体が放つ重い攻撃から単なる魔物ではなく、少しの油断も許されないものだった


「なんだろう…この感じ、どこかで」

「分析は倒してからにしてくれ!」


相手の動きを錯乱しつつ、ミラ達は攻撃を繰り出そうとしていた

視線を奪われていたミクニは、駆けだし、彼らの元へと急ぐ

ミラが刃を振り下ろそうとした瞬間、ミクニはその間へと入り込み、攻撃を受け止めた


「何をする!?」

「ミクニ…!?」

「お願い!この子を傷つけないで!!」


切羽詰まったように叫ぶミクニの姿にほとんどの者が動揺する

ミクニがミラの武器を弾き返せば、ミラは鋭い視線を向けた


「今すぐそこを…っ!!」

「危ない!!」


それでも引き下がろうとしないミクニがジュードの声で後ろへと振り返れば、凄まじい勢いで相手の尾が襲ってきた


「大丈夫!?ミクニ!!」

「…私は、平気」

「でも、血が…!今すぐ手当てを、」


咄嗟に弓を盾に衝撃を和らげたが、ミクニの口元から血が流れる

駆けつけてきたジュードが治癒術を施そうとするが、ミクニは光の魔物へと歩んでいく


「正気か!?」


誰から見てもミクニの行動は正気から行えるものだとは思えなかった

それでもミクニは、荒れている光の存在に近づく


「…今、解放してあげるから」


(お願い、力を貸して)


今にも襲いかかってくる相手に、ミクニは悲し気に微笑みながら、矢の代りに携えていた剣を引き抜く

美しい刃が鞘から姿を現すと、天へと掲げられ、仄かに淡く輝いている

その動作の中、ミクニへと鋭い爪が振り下ろされようとしていた

けれど、それはミクニの元へと届く前に動きを制止した

まるで刃の美しさに魅了されたように


「何をする気だ…っ?」

「待って、ミラ」


ある答えが頭へと浮かび、ジュードはミラの動きを止め、見守ろうとする


(…明星―――)


ミクニの意思―――力に共鳴し、刃が持つ力が引き出されていく

風が靡き、淡い光が立ち昇ると、それはミクニと相手を包んだ


「これは…」

「…微精霊だよ」


呪縛が解かれたように、微精霊達が解放されていく

ミクニは優しい笑みになり、強制的に捕捉されていた微精霊へと触れる


「良かった…」


美しい光景に皆が目を奪われる中、ミラの視線は天へと登っていく微精霊からミクニへといく


「…あの者は一体…」


精霊の主と呼ばれる自身でさえ気づかなかった微精霊を守ろうと、動いた存在が其処にいた




慈しむい姿の本心は、今はまだ掴めず



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