「なぁ今日どこ行く?」 「ゲーセンとかどう?新しい音ゲー入ったらしいよ」 「じゃあ決まりだな。風丸も行くだろ?」 「いや、俺はやめとくよ」 「なんで?」 「なんでって言われても…」 屋上で、サッカー部のメンバーでお昼を食べていたときだった。半田と松野の会話に巻き込まれた風丸は苦笑いを浮かべている。私は呆れているのを隠さず二人を見た。 「余裕だねぇ。明日はテストなのに」 「僕は平気。半田も平均はとるでしょ」 「まぁ…な…」 「まったく…少しはアレを見習ったらどう?」 顎で示した先には、豪炎寺と鬼道と秋ちゃんに囲まれて頭から湯気を出している円堂の姿。円堂以外の顔を見るにどうやら10歩すすんで9歩さがっているようだ。こっそり人のおかずを横取りしようと松野が伸ばしている手をわりと強く叩いてため息をついた。 「馬鹿力」 「うるさいコソドロ」 「そんなんだから彼氏ができないんだよ」 「そんなんってどんなよ」 「わからないの?」 「2と10だけ説明されても普通はわからないんじゃない?」 「察することもできないなんて嘆かわしいね」 「相手を思いやれないなんて可哀相な人」 「…」 「…」 (レベル低い…) (この二人ってたまにアホだよな) 「私の合計点マイナス10以上取れたら、なんでも奢ってあげる」 「フェアじゃないね。マイナス100」 「ノーリスクハイリターンなんだから多少の無茶は当然でしょ。…まあいいよ。マイナス20ね」 「言ったね?」 「言ったけど?」 「あと2分でチャイム鳴るぞ」 「まだ全部食べてない!」 がちゃがちゃと秋ちゃんお手製弁当を食べていると、どうやら円堂の勉強を(どんな理由かは知らないが)終えたらしい3人が戻ってきた。秋ちゃんはそうでもないが、豪炎寺と鬼道はよほど疲れたらしく、いつものポーカーフェイスが完璧に崩れている。私たちが苦笑を浮かべたのとほぼ同時に円堂は深々と疲労感漂うため息をついた。 「予想通りの円堂くんに私は頭が痛いわ」 引き攣った笑顔を浮かべる夏未に私たちは苦い顔で返す。一番居心地悪そうに視線をそらしているのは鬼道と豪炎寺である。二人は自分が勉強する時間以外のほとんどを使って円堂に勉強を教えていたのだから、耳が痛いのはむしろ二人の方かもしれない。 「まぁ…ほら、部員全員で平均出すと、絶対断トツでしょ?…円堂ができないものを皆で補えば…ね?」 「そういう問題ではないのだけど…まぁ、以前より点数も…僅かに…上がっているみたいなので、今回は見逃してあげます」 「ありがとう夏未!」 「つ、次のテストが楽しみね!」 「うっ」円堂と照れて後ろを向いた夏未を見ているとなんだか微笑ましい。それは私だけではないようで、染岡も土門も似たような表情を浮かべていた。 「で」 「ん?」 「マックスと名前の勝負はどうなったわけ?」 「そういえば…忘れてた。松野どうだった?」 「500点中でしょ?僕は452」 「ふふん。私は492」 「え!?」 「鬼道何点だっけ!?」 「499だ」 「…そりゃ平均も断トツだよなぁ」 「悪いのって円堂くらいでしょ?染岡って見た目によらずいい方だし半田は普通だし、土門は英語だけは強いし」 「おい」 「もうテストの話はいいだろ!やっと終わったんだし、皆、サッカーやろうぜ!」 「そりゃ円堂はな」 「やるかー」 「体力絶対落ちたね」 「俺は走ってたからそんなことないけどな」 がやがやとグランドに向かう皆を眺めて、マネージャー同士顔を見合わせて笑っていた。このまま楽しい毎日がつづけばいい。知らず知らずのうちに浮かんだ笑顔を気持ち悪いと言うマックスの背中をばしんと叩いて、ドリンクのカゴを持ちグラウンドへ駆け出した。 *** 長い間お待たせしてごめんなさい… デルタの日常を書くのが一番楽しいことに気づいたので、本編での日常話が増える…かも(^ω^*) リクエストありがとうございました!これからもよろしくお願いします(*´ω`*)ぽっ |