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「名前、なのか?」
今日はよく人と会う日だ。半年ぶりに見た水色は、暗闇の中でもよくわかる。ボールを蹴るのをやめて、スカートの裾を引っ張って整えた。
「風丸…久しぶりだね」
「久しぶりって…今までどこに行ってたんだ!皆心配してたんだぞ!」
「…ごめん、そんな暇なかったの。どう説明したらいいのかわからなかったっていうのもあるんだけど…。詳しくは、聞かないで欲しい。お願い…」
「…わかった。でも何かあったら言えよ。いつでも聞くから」
「…うん…うん…ありがとう…」
「名前、」
「、なに?」
「…いや、なんでもない。それにしても無事で安心したよ。皆も喜ぶ」
「…でもまだ、戻れないの。どれくらいかかるかわかんないし…」
「戻って、来るんだよな?」
「…うん。絶対、戻る。そうしたら、また、サッカーしてくれる?」
「そんなの、あたりまえだろ」
「ありがとう。…じゃあ私、もう行かなきゃ」
「…そっか。名前は元気だって、皆に言っとくよ」
「うん。…戻ってきたらさ、一番に風丸に会いに行っていい?」
「…名前、」
「なに?」
「好きだ」
「…返事は戻ってきてからでいいかな」
「あぁ…待ってる」
「…期待して、待っててね」
ワンピースの裾は、ぎゅっと握りしめていたから少しシワが寄っていた。好きだった。本当に好きになれた人だった。この気持ちに嘘なんかなくて、待ってて欲しいのも本当、なのに。
私たちは嘘つきで、私は、自分の言った言葉の残酷さを知っていた。
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