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どきどきと心臓がせわしなく動くわりには体は全く温まらない。むしろ次第に背筋から嫌な冷たさが脳に這い上ってくる。これは夢だ。悪い夢。鍵のついていない自室の扉が開かないのは、夢だからだ。背後で何かがうごめいた気配がした。ぞわりと首筋に何かが這った。圧迫感。体ががたがたと震える。苦しい。声にならない声が出る。「名前?」扉の向こうから風丸の声が聞こえて、閉じかけていた瞼を無理矢理持ち上げた。「おい、大丈夫か?」「か、ぜ、ま」「っ」夢だった。夢だったのだ。安堵からか、涙が頬を伝った途端に風丸は慌てたように口を開いた。「もしかしてその首のあざ、痛むのか?」
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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