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刀佳 舞咲(かたなか まさき)
主人公。容姿は普通。性格は捻くれてる。ちょっと口悪い。沸点が異様に高くて見当たらないので誰も怒っているのを見たことがない。嫌な事があると真顔になる。いろんな人から頼りにされる。本人が知らない人からも頼りにされる。正直ちょっとウザいらしい。手先が器用で料理が上手。甘いものが嫌い。キムチ好き。雷門中硬式テニス部マネージャー。


丘珠 麻里(おかだま あさり)
容姿最高。ちょー可愛い。男の子からの人気が高い。馬鹿。女の子からはなにあの子ちょっと可愛いからって調子にのってんじゃねぇよとか思われてる。雷門中硬式テニス部マネージャー。




ドリンクを作るのはいたって簡単。粉入れて水いれる。終わり。量が増えると面倒なだけで、そんなに時間はかからないはずだ。うちの部活は人数も少ないわけだし、なおさら。しかし、目の前にいる彼女は40分かけてドリンクを作ってきた。どれほど丁寧に作ったというのか、ぜひ教えてもらいたいものである。
「遅い」
「うぅ…舞咲ちゃん、ごめんねー」
「ほら、さっさと配んな」
「あっそうだ…ごめんなさい…」
しょぼんとしてる麻里にときめいてんじゃねぇよ。私は心の中で他の部員に毒づいて、タイマーに視線を向けた。14、13、12、11…
「部長、休憩終わり」
「サンキュ!集合!!」
わらわらと集まる部員に指示を出している部長を視界に入れながら、どこかぽやっとしている麻里に声をかけた。
「どうしたの?」
「部長から、部活終わったら校舎裏でって…。ど、ど、どうしよう…!こ、告白だったりして…」
後片付け私一人でやれってか。マネージャーの仕事はほとんど私がやっていることを部長すらもわからないのだろうか。もう付き合ってられない。私の肉体的疲労だけでなく、精神的疲労も限界を迎えた。
「私、今日早退するけど、応援してるから。がんばれ!」




「へぇ。それで、やめるんスか」
「うん。やめる」
ベンチに座り、ストリートテニスを眺めながらつい先程会った1つ下の少年に、つい先程の出来事を聞いてもらっていた。どうでもよさそうにだが、きちんと返事をしてくれるので話しやすい。
「そんでここでテニスする」
「ふーん」
「ね、打たない?シングルでワンゲーム」
「…別にいいっスけど」
「手加減とかしないでね。私、今イライラしてるから、本気なの」
久しぶりに握ったグリップは、異様にフィットして気持ち悪い。家に帰ったら変えてしまおう。そう心に決めて、サーブを打ち返した。




「やるね」
「そっちこそ」
二人してベンチに寄り掛かり、だらだらと流れる汗をタオルで拭っていた。
「あー、もう。悔しい。あと少しで勝てたのになぁ」
「…なんでテニスしないんスか」
私はにっこりと笑う。
「楽しいって感じなくなったから。」
「…」
「君は今、手加減してなかったよね。色んな技使ってきてたし。というか、勝つためには手加減なんてしてられなかったでしょ?青学のレギュラーと、ワンゲームとはいえここまでいい勝負ができる実力で、部活を約2年続けるとか、ちょっと無理っぽいじゃん。変にボロ勝ちして、反感買うなんてごめんだしさぁ」
「ふーん」
「今日はもう帰るけど、まぁ、たまには打ってね。次はもっと上手くなってるからさ」
「…っス」
ぐっと体を伸ばして、それから腕を回すと、明日は筋肉痛になりそうな予感がした。「ばいばーい」今日は走ろう。コート横の階段を降りてすぐに屈伸して、駆け出した。ぐんぐんと移り変わる風景は見慣れたもので、けれど少しだけ違うような気もした。楽しかった。家の目の前に着いて、気付いた。今日の冷蔵庫は空っぽかもしれない。居間にラケットをケースごと投げ置いて、財布を掴み慌てて家を出た。スーパーまでの道のりを走り抜けながら、やっぱり今日は楽しかった。そう思って、ちょっと笑えた。
ふと視界に入った鉄塔に、寄り道していこうと体の向きを変えて広場の入口を潜ると、腕を踏み台にして跳び上がるというなんだか凄いことをしているサッカー部3人組がいた。
「あ、舞咲ちゃん。どうしたの?」
「買い物の寄り道。…ねぇ、秋ちゃん、これ、サッカーの練習?」
「うん?そうだよ」
「へぇ…何がどうなるのかわからないけど、応援してる。頑張ってね」
「ありがとう!…あ、あの、」
「うん?」
「もしよかったらなんだけど、今度の試合、見に来ない?」
「野生中、だったっけ?…うん、行く。絶対行くよ」
「本当!?よかった、すごく嬉しい」
にこりと笑んだ秋ちゃんに笑い返した。
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テーマ「人外ファンタジー」
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