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「大丈夫か?」
心配そうに眉を下げて言った目の前のクラスメートは、それはもうやばいくらいのべっぴんさんである。何がやばいのかと言うと、直視する度に高鳴る私の心臓と、ストーカーかと言いたくなるほどに眺めまくる女の子たち。鈍感な彼は全く気付いていない。その鈍感具合は刺すようなぎらついた瞳に見られているわけでもないのにびびる私がいるほど。だってあれはこわい。後ろの席の名前も知らない男子が「モテたいとは思うけど風丸みたいに鈍感じゃないから堪えられねぇ。つうかあれはないわ」と言っていて、まったくだとしきりに頷いたのは記憶に新しい。
「大丈夫です」
美化委員の仕事中に派手に転んだ私を、たまたま通り掛かった風丸くんが慌てて起こした。保健室に行こうと言う彼に、一人で行けますと少し早口になりながら言って立ち上がると、体がふらついて、また倒れそうになったのをそっと支えてもらった。いい匂いがする。………変態か!
「心配だから、一緒に行かせてくれないか」
苗字さん。控えめに呟かれた名前のせいで、どきどきと心拍数は上がり体温上昇。あっつくてあっつくて仕方ないので遠慮しますと口を開いたが言葉は出ず、代わりに静かに頷いた。私の体は、存外正直なものらしい。




名も知らぬ後ろの席の方、聞いてください。春が来そうです!

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テーマ「人外ファンタジー」
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