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※やんでる
※しもいかも



ぐりぐりと鋭い爪が私の肌を刔る。どくどくと体中が波打って、私は少しずつ冷えていく。乱暴に押し付けられた唇。二回目は噛み付かれて、下唇から微かに血が流れた。服は、どこに行ったのだろう。痛みから流れる涙のせいで、視界が悪い。斑の髪がちらついて、聞き覚えのある、独特な笑い声が微かに聞こえた。鼻につんとくるこの臭いは私のものだ。シーツを染めているかつては赤だった液体も今や薄茶色になってしまった。ぱりぱりとしていて嫌な感じがする。
「ぁ、っ」
この行為に何の意味があるのかと、いっそ聞けたのならばどれだけ楽になれるのだろうか。つい先日まで遠い記憶に想いを馳せていた私は、どこにいったのだろうか。消えてしまったのかと聞かれれば、それは違うと答えよう。きっと、記憶と思考の波に怯えて隠れてしまったのだから。ねぇ、あなたは、捜しているのでしょう?遠い目をして私を見つめるのは誰かと重ねているからでしょうけれど、あなたが微かに漏らす名前は、私のもの。ねぇ、はやく、見つけてよ。汀目くん。
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