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まだ癒えていない傷が空気に触れて、痛そうだと思った。遠くで転がっているサッカーボールは砂まみれで、汚い。「わたしね、やりたくてサッカー始めたわけじゃないの。怪我するし、やけるし、運動得意じゃないし。でもさ、なんか、楽しいね。皆で何か頑張るとか、そういうの。いっつも一人で、つまらなそうにしてた私を誘ってくれてありがとう。塔子が声かけてくれたから、サッカー始めたの。塔子が楽しそうにサッカーしてるから、マネージャーもね、楽しいんだよ。」わたしは絆創膏を救急箱の中から取り出しながら。塔子はもう二度と走ることの出来ないわたしの足を見つめながら。一度も口を開かなかった塔子の傷は、まだ癒える気配はない。
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