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■18390ページ目

▽お父様へ。お元気ですか。わたしはこのノートにいつもどおり橋であったことを書き残しておくことができるほどには元気です。この下りを書いたのはこれで8390回目になります。ノートは、30冊になりました。はやくお父様が帰ってきてくださることを願います。


しとしとと雨が冷たくなった体に降り注いでいる。流しきれない血が滲んで辺りに広がっている。見ようによっては美しく、考えかたによっては醜い。そんな光景。倒れた男に抱き着くようにして、女が泣き叫んでいる。日本語ではない。本来は美しいだろうプラチナブロンドが雨に濡れ血に濡れ土に塗れている。コンテナとコンテナの間。橋の中心からは死角になっているそこで、流れ弾にあたり死んだ男。それに抱き着く女。泣き叫ぶ声。もうこの女に未来はない。銃口が女へ向く。透明な雨合羽に水がはねる。声をかけると女がゆっくりとこちらを向く。どうしたい。殺して。質素な会話。3、2、1。急に激しくなった雨音で掻き消された空気を切り裂く音に足元で丸くなっていた犬が吠えた。
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