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設定
※円堂のお嫁さんは夏未です。
GO沿い。
■雷門 夏希 女 14歳
夏未の妹に転生したGO知識有りの女の子。
桃のような髪色で、目は茶色。
夏未にとても似ている。
美人。ナルシスト。猫かぶり。無印組にはバレてる。
男子受けはいいが女子受けはそれなり。
周囲からは優しくてちょっととぼけた女の子と思われている。
■岬 由衣 女 14歳
トリップ転生イナGO知識有り。雷門サッカー部マネージャー。
サッカーがとても上手い。
黒い髪に黒い目。清楚系美少女。
男子受けも女子受けもいい。




世界平和計画

きらきらしている。窓枠にのせた両腕に顎をのせながら思った。雲一つ無い空は、それだけで私を晴れやかな気分にさせる。このまま寝てしまおうかと瞼を閉じようとしたとき、ふと視界に映った見知った人影に私の頭は覚醒した。ぴょんっと飛び起きた拍子に派手な音をたてて椅子が倒れ、足がひっかかり、これまた派手な音をたてて盛大に転んだが、まぁそんなことはどうでもいい。朝早くて誰もいない教室というのがとても虚しいが、それも、どうでも、いい。急いで椅子をなおして、バタバタともの凄い勢いで教室どころか学校を飛び出したがそこにはもうサッカー部と先生しかおらず、出遅れたのはつまり椅子のせいである。
今日は久しぶりにお姉ちゃんに会いに行ってみようか。考えながら、とぼとぼと河川敷を歩いていると、なんだか覚えのある賑やかさが耳に入ってくる。懐かしい。ふとそんなことを思う自分がいる。しかしサッカー部はあんなに立派な建物があるというのにも関わらず、どうしてこんなところで練習しているのだろう。今は、自分にはあまり関係の無いことだとは知りつつも、不思議に思い、首を傾げながら橋にさしかかる。グラウンドの練習を眺めているサッカー部の二人を見つけて、その瞳が迷いに揺らいでいることに気づいた。彼に似ている。漠然とそう思った。古い記憶の中の彼もたしかあの時、この場所で迷っていた。それを救ったのは、お姉ちゃんだ。まだ記憶がはっきりとせず無力だった私は、それを車の中から見つめていた。助けたい。掬い上げて、またサッカーをして欲しい。単なるエゴかもしれない。それでも、何か、力になりたかった。でも今は彼らの力になることはできない。そもそもサッカー部の誰かと仲がいいわけでも無い、私が出ていったところで無駄に警戒されるだけだ。目立つことは避けたい。今までは何の力も無かったから、お兄ちゃんやお姉ちゃんを見てるだけだった。でも今は私も、関与する側の人間だ。下手なことはできないと自分に言い聞かせて、素通りをした。視界の隅にうつるよく見知った人はこの際見なかったことにしよう。私は私にできる精一杯の自然さを装って歩いた。



悪巧みはほどほどに

コーヒーが、おいしい。おそるおそる口に含んだコーヒーがとてもおいしくて、とても驚いた。つい最近までは、決しておいしいとは言えない奇抜な味だったというのに、いったいどうしたというのか。…秋姉か?冬姉か?
「このコーヒー、」
「木野さんに美味しいいれ方を教わったのよ。やっぱり彼女はすごいわね。」
「秋姉そういうの得意だもんね。」
「…ええ。」
そっと沈黙がおりた。私もお姉ちゃんも、あまりテレビを見るほうではないので、家中が静かだ。かちゃ、とカップを置く音がやけに響いた気がした。
「本当は、どうしようか迷ったのだけど…頼みたいことがあるの。」
「うん。…なんでも言って。」


サッカーボールには、久しぶりに触った。懐かしい感触が掌から伝わってくる。
「お兄ちゃん、雷門に来るなら言ってくれればよかったのに。」
「はは、悪いな。結構急な話だったからさ。名前こそ、見かけたなら声かけてくれればよかったのに。」
「さすがにサッカー部でもないのに割り込んで行けないって…。」
「サッカー部に入ればいいじゃないか。」
「いや完璧出遅れてんじゃん…。マネージャー5人は多すぎるしさぁ。」「選手としてはどうだ?」
「無理があるだろ…私は女子だよお兄ちゃん…」
まったく…と呟きながら温かい紅茶に口をつけて、そういえばお姉ちゃんはどこだろうと辺りを見渡すが、どうやらリビングにはいないようだ。
「今日はもう帰るね、お姉ちゃんによろしく言っておいてー。」
「送って行くか?」
「んー、いいや。今日は雷雷軒寄ってくし。」
「そっか。気を付けろよ。」
「はーい。」




ごめんなさい。心の中で呟いてから、そっと、サッカー棟の、2軍の更衣室へ滑り込むようにして入った。端にあるロッカーへ手をかけて、静かに開く。中の物は思っていたより乱雑に積まれており、この中から短時間でたった1冊の手帳を探すのは少し無理がある。小さな懐中電灯でロッカーの中をくまなく照らしても、見当たらない。…仕方ないか。小さくため息をついて、積まれているファイルを1冊ずつめくっていった。しばらくすると、ファイルとファイルの間に挟まれた、やけに可愛い手帳を発見した。ご丁寧に鍵がかけてあるそれは、明らかに怪しかった。ごめんなさい。心の中でもう一度謝ってから、その手帳を自分の鞄の中に忍ばせた。
入ったときと同じようにそっと2軍の更衣室から出て、それから、そのままミーティングルームに入ろうとしたときだった。
「誰?」
ミーティングルームの扉が開くと、目の前には手帳の持ち主である少女の姿があり、お互いに笑みをつくったままかたまってしまった。バレなければ問題は無いのだ。わかってはいるが、少しの罪悪感で胸が痛む。
「あ、あの、」
「!あ、かっ、勝手に入ってごめんなさい…!」
「なにか、ご用?」
「えっと…、」
「どうした?」
私が口ごもっていると、奥からぞろぞろとサッカー部が出てきて、思わず後ずさってしまった。
「ちゅーか、なんでミスがここに?」
「ミス?」
「去年のミスコンで優勝したからミスって呼ばれてるんですよ。」
何それ初めて呼ばれました。
「ん?夏希じゃないか!」
「お兄ちゃん…」
「「お兄ちゃん!?」」
小走りで駆け寄って、誰もいないから不安になっちゃった…と静かに呟く。私の変わりように苦笑いを浮かべているお兄ちゃんにひっそりとため息をついていると、私たちの関係が気になったらしいサッカー部がそろそろと近づいてきた。
「監督、」
「あぁ、夏希は義理の妹なんだ。でもちょうどよかった。手伝って欲しいことがある。」
「え?」
「チームオペレーターの力を借してくれないか?」
「う、うん…。お姉ちゃんには及ばないと思うけど、私なんかでよければいくらでも!」
ぐっと拳を握ると、お兄ちゃんは嬉しそうに頷き、私たちの様子を見ていたサッカー部はえええと大きな声をあげた。



「トビー!」
がらっと勢いよく扉を開けて意気揚々とカウンター席につくと、ため息をつきながら、待ってましたと言わんばかりの出来立てラーメンが出てきた。
「はっはっはっ!意志疎通ばっちりじゃねぇか!おい飛鷹、よかったなぁ、嫁さん候補がこんな別嬪さんでよ!」
「やめてくださいよ…。」
「私、いち兄一筋だから。」
「がっはっはっ、フラれてんじゃねぇか!で?今日はどうしたんだ夏希ちゃん。」
「んぐ、そう、そうよ聞いてよ!私女の子に嫌われてるのは知ってたけど、いつ私が女の子嫌いだって言ったの!?好きよ!女の子大好きよ!」
「夏希ちゃんグラビア見て喜ぶぐらいだもんなぁ。じゃ、俺らは帰るよ。ごちそーさん。」
「ばいばーい。まぁそりゃ私は可愛いから嫉妬するのもわかるけど、」
「…雷門先輩?」
「私より可愛い子なんてたくさんいるのに!ん?」
にぎやかなお店で豪快にラーメンをすすりながら愚痴っていると、いつのまにやらサッカー部達が入ってきていた。一瞬で静かになった店内で、ぎょっとして振り向いた私のラーメンに、飛鷹さんがぼちゃっと1玉入れた音が変に響いた。
「えっ、サッカー部?」
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