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私と彼女が出会ったのは、ほんの偶然のことでした。私が彼女の知り合いである彼と付き合っていたという、ただそれだけの理由です。ですがそれは今思えば必然であったのかもしれません。あのとき私たちの周りは間違いなく彼女を中心にして回っていたのですから、彼女が私を望んだことは、必然であったのでしょう。
私が初めて彼女を見たとき、彼女は真っ白な病室で静かに眠っていました。まるで命の灯火が今消えたとでもいうかのように静かで、私はまったく何の意味もない、恐怖と羨望に苛まれました。それは一瞬のことでしたが、私は今でも鮮烈に覚えています。なぜだか無性に悲しかったのです。
私と彼女が一緒にいた時間はとても短く、全て合わせても1日の半分どころか4分の1にも満たないものでした。そのうえ終にはお互い気を許すこともしなかったものですから、とても私たちにお互いのことなどわかるはずがなかったのです。
ところが私と彼女は、不思議なもので、お互い旧来からの親友にでも抱くような、恋慕にも似た愛情を抱いていました。もしかしたら、彼女は私に対しただ純粋な恋情を抱いていたのかもしれませんが、今ではそれを知る手立てなどどこにも無いのです。
彼女の命の灯火が消えたのは、ちょうど10年前の今日頃のことでした。
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