私が彼になってから、もがいてもがいて、それで好転したことなんて一度もなかったような気がする。他人を傷つけることしかできないのだから、物言わぬ綺麗なお人形でいた方がいい。
先生に言われた通りに勉強して、棘を隠すよう真綿で包むように微笑んで、名も知らぬ誰かの涙をそっと拭い、親に言われるがまま、誰もが羨む美貌が霞まぬようにたゆまぬ努力を。そうして生きた13年。裏側に潜むものに、本当の私に、誰も気付かない。いつしか誰にも知られず静かに泣いていた私は、その存在を主張し始めた。一線引いた場所から世界を見ていた私は、ときたまそっと顔を出す。正直者だとか能天気なやつだなんて言われていた私は、ひどく狡猾で、残酷な人間になっていた。
他人なんて何を考えているかわからない。誰も信じない。自分より馬鹿なやつなんて、所詮は駒でしかない。歪んだ考えだ。我ながら酷いやつだと思う。でも、でもね。私が綺麗に微笑んで、手を差しのべて、優しく言葉をかけるだけで、ころっと私を好きになるような、そんな馬鹿ばかりなら、生きている意味なんてどこにもないよね?


『わたくしごとの不幸せ』





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