里帰り中の実渕とウィンドウショッピングに来ていると、どこかで見覚えのある女とばちり、目があった。誰だっただろう。とりあえず笑んで、会釈をしておく。
「あら、可愛い子。知り合い?」
「多分な」
適当に手にとったのは露出が大きい服だった。実渕は楽しそうに大胆ねぇなんて言って笑っている。誰が着るか、バァカ。
「花宮さん、お久しぶりです」
かけられた声に振り返ると、さっき目があった女だった。やっぱりどこかで見覚えがある。
「えっと、ごめんなさい。どこかで会いました?」
「あ、私、仲田香織です。憶えていらっしゃいますか?」
「え、仲田さん?中学が一緒だった?」
「はい!そうです!よかったぁ、憶えてくれてて」
「ごめんなさい。とても可愛くなっていたから、気づかなかったの」
「えへへ、ありがとうございます」
お世辞じゃない。彼女は驚く程綺麗になっていた。いつかの俯いて自信のない彼女とは違って、前を向いて、輝かしい笑みを浮かべている。空気を読んで離れて行った実渕は、それでも視界の隅にちらちらとうつっている。
「私、花宮さんのこと、今でも好きです。恋愛感情の、方で」
何気なく放たれた爆弾に一瞬思考が止まって、それでもとりあえず、そう、なんて言葉をひねり出した。
「今、八田くんと付き合ってます。花宮さんに手酷くフラれたのが、軽くトラウマみたいですけど」
「幻滅した?」
「いいえ。同じことをしようと思っていたので、少し、安心しました」
彼女の言葉を聞いて、ああ、人って変わるものだなと思う。八田は可哀想なやつだ。傷心に利用されて、何れは捨てられることが決まっている。いつの間にか隣に戻ってきていた実渕に、嬉しそうね、なんて言われて、まあなと返した私の頬は、珍しく緩んでいた。ああ、人って、変わるものだな。いい方にも、悪い方にも。


『すべからく君は脆い』





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テーマ「人外ファンタジー」
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