笛の音が響いた、あの日。

帝光中にボロ負けした日から、部員たちの様子は変わった。真面目に、楽しそうにプレーしていたはずの彼らは、至極つまらなそうにバスケをやるようになってしまった。飯島はそんな彼らを見ては辛そうに俯く。私は花宮らしく、ゲスい言葉の一つや二つ投げ掛けてやればいいのだろうか。でもそれは私の本意ではないし、そもそも彼ほど歪んではいない。帝光中との試合で最後まで諦めなかったのは私と飯島だけだったが、だからといって、ここで挫けていいのだろうか。いい子ちゃんぶって何か言うつもりはさらさらなかったが、だからといって何かかける言葉を見つけることもできなかったわけで、だから、こんなことになったのは間違いなくあいつらが悪いのだが、主将である以上、私にも消ゴムのカス程度の責任はある。少なくとも外部の人間は、責任はおおむね私にあると答えるだろう。ある日からラフプレーの練習をしていたというのは知っていたが、一度注意したきりで何も言わなかったわけだし、まあわからなくもない。ただ、実際に試合でラフプレーを行なったのはあいつらで、私は知らないのに、とも思う。団体は連帯責任が伴うはずで、それがどうして私だけが責められるという事態に陥っているのだろうか。偏りすぎな連帯責任である。そんなこんなで、飯島ではないが、胃薬を常備し始めた頃のことだ。私と、ラフプレーを推奨する他の部員たちとの間を取り持っていた飯島が倒れてしまったのだ。原因なんてわざわざ病院へ行かなくともわかった。心労だ。ラフプレーを行わせないよう諌めていた飯島が可哀想ではあったが、彼が倒れたと聞いたそのとき、私は心を決めてしまった。ごめんね。

「お前らが絶対にラフプレーをやめないのはわかった。私たちは次が最後の大会になる。その大会が終わるまで……私が主将である限りは、お前らのラフプレーを認めてやる。ただし、私が指示を出す。従えないやつは即刻部活を辞めろ。それから、」
困惑を浮かべる部員たちを冷ややかに見つめながら、私は対価を要求した。静かに頷いた彼らを見て、こいつらはこんなに追い詰められていたのかと目を細める。覚悟はできた。心の中でだけ飯島に謝ったその瞬間、私は正真正銘、悪童となったのだ。


『かわいそうになりそこなった子どもたち』





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