ひなげし | ナノ


3度目の正直にかけて


「なぁ、はるのも早く俺達のところに来いよ。」どこか虚ろな目で私に語りかける彼に、私はただ涙を流していた。何をどうすればいいのかわからないのは私だけではないようで、私の後ろではマネージャー達が呆然と立ちすくんでいる。「もう、どうしようもないのかな…。」「はるの、ちゃん…?」「1回やり直したくらいで、何かがかわるわけじゃないのかな…。ごめんね、」さよなら。



「そんなところで、何してるんだよ。」
「ん…」
「起きてるよな…?」
呆れたように笑う風丸の青くて長い髪が日の光できらきらと輝いていた。眩しくて、情けなくて、自然と涙が止まらなくなる。
「お、おい、なんで泣いてるんだ?」
「私って、だめだね。ほんと、だめ。」
「…。」
キャラバンの上で寝転がって空を見上げる私の隣に座って、何も言わずに私の言葉を待っていてくれる風丸が大好きだけど、本当は、それじゃいけないってわかってる。
「どうしたら、心は強くなれると思う?」
「…はるのは強いよ。」
「そんなこと、絶対に無いよ。だって私、諦めが早いもの。…現実を直視するのが、凄く怖い。」
「誰だってそうだろ。」
「…円堂くんは?」
「円堂は別。…あいつは凄いよ。諦めるってことを知らなさそうだ。」
「そっか。…そうだね。でも、円堂くんはさ、」
むくりと起き上がって、一度風丸ににっこりと笑いかけて、それから空を見上げた。空は何度見ても形が変わるから、好き。
「風丸がいるから…見守ってくれてる人を知ってるから、頑張れるんじゃない、かな。」
「そんなことないだろ。」
「そうかな。私はそうだと思うよ。だって風丸の隣って、落ち着くもの。…だから、風丸ってあんまり自分のこと話してくれなくて、たまに不安になる。迷惑ばっかりかけてるんじゃないかな…って。」
「…円堂とはるのには、凄く助けられてるんだぜ。全然迷惑なんかじゃなくってさ、なんか、目が離せないんだよ。」
「なんだか、保護者みたいね。」
「よく言われる。」
「なんかあったら、言ってね。…最近悩んでる、よね?」
「あぁ。」
返事をしてから何も言わなくなった風丸の隣で、ずっと空を眺めていた。なぜだか今は、ちっとも落ち着かなかった。
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