ひなげし | ナノ


後悔なんかしない


「わたしはこうかいなんてしない。」
ぎゅっとスカートの裾を握って、まっすぐゆみかを見据えて言い放った。私の足元でばらばらに散った×××の花に嘲笑われているような気がして、唇を噛み締めた。
「…わかってるよ、はるのちゃんは、大丈夫だって、わかってる。…それが嘘だっていうのも。」
「…ゆみか。」
「いっつもそうやって何も言わないから皆不安になる。そうして何もかもズレていく。予定調和の未来なんか、」
「わかってる。私が一番、よくわかってる。」



「僕と契約して、魔法少女になってよ。」
記憶の中のそいつは、なんでも1つだけ望みを叶えてくれるという。まるで猫のような兎のようなぬいぐるみのような生き物。そんなもの縋ってしまいたいのは、ただ哀しいだけの虚構なのではないだろうか。
「大丈夫。どんな奇跡のような願いでも、叶えてあげられる。」
私は涙を零しながら、静かにその生き物を抱え上げた。
「本当に?」
「そうさ。人生をやり直すこともね。」
「やりなおす、?」
しっぽがゆらゆらとゆれている。私の視界は涙でぐらぐらとゆれていて、気持ち悪い。
「僕と契約して、魔法少女にならないかい?」


その時の私は、この得体のしれない生き物こそが神のように思えてならなかったのだ。
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -