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人死にに理由があるとでも?


もぞもぞと布団の中で体の向きを変えてみても、なんだか落ち着かなくて眠れない。起き上がって、髪をぐしゃりと掴んだ。自分が思っているより今の状況に適応できていないのかもしれない。今の私は、確実に"前"より弱い。布団を強く、強く握りしめた。



「…ヒメちゃん、今は役立たずですから仕方ないですけど、せめて起こしてくれるとかあってもいいと思います。」

私が起きてきた時には、大人版の山本くんとともに沢田くんと獄寺くんの姿が消えていた。

「まあそう言うな。名前にはこれを渡そうと思ったから残ってもらったんだぞ。」
「これ…、どうして…?」
「10年後のお前がこのアジトに常に置いていたものらしい。」
「そうですか…。わかりました。」

リボーンちゃんから受け取った黄色いポシェットをぎゅうっと抱き締めて、酷く懐かしい感覚に目を細めた。

「ん?」
「?あ、」
「よく来たな、お前達。」
「小僧、苗字も。」
「リボーンちゃん!名前ちゃん!?」
「山本くんに、京子ちゃんまで、…とりあえず、ヒメちゃんはやらなきゃいけないことがあるのでいきますね。」
「ああ。…いろいろ驚いただろう。追い討ちをかけるつもりはねーが、今からここで起こっていることを教えてやる。心して聞いてくれ。」

皆に背を向けて、自室へ向かった。他にどこにどの部屋があるのかを知らなかったからなのだが、初めから沢田くんを見舞おうなんて気はさらさらなかった。今の私は余裕が無い。10年後の私が何を考えているのかなんてさっぱりわからないが、少なくとも今この状況を見越していたのだろう。その上で、私にこの戦いに参加しろと言うのだ。やってやる。ポシェットから出した手袋をしっかりはめて、私は、笑った。
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テーマ「人外ファンタジー」
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