猜疑心に塗れ逃亡
「いいですか、西条ちゃん。これから言うことを守らなければ幸せなスコーンライフは訪れないですよ」
地面にぺたりと座り込み、びしっと人差し指を突き付けた。突き付けられた玉藻はといえば、眠そうに目を擦っている。はらはらというよりはいらいらとしている城島あたりは先ほどから騒いでいたのだが、あいにく、声が届く場所ではいなかった。
「そのいち、人殺し禁止!そのに、学校をサボらない!そのさん、お礼の言葉は忘れない!」
「ゆらぁ…りぃ」
「あ、あと、」
「?」
「澄百合の人とか、暴力の世界の人に会ったときはすぐヒメちゃんにいってくださいね。」
こくりと頷いたことに満足して、立ち上がった。
「それじゃあ、沢田くんたちを助けてあげましょう。後のことはヒメちゃんに全部任せてください。可愛い可愛い後輩のために、一肌剥ぎましょう」
「あり…が…、ゆらぁ、…り…と、うござ、い、まぁ………す」
「さぁレッツラゴオです!」
人差し指を動かしながら、決して急がず焦らず歩いていく。くいっと、ついっと、人差し指を、動かしながら。
「…」
それを目にした玉藻は背筋にうっすらと寒気がして、けれどそれを振り切るように首を振った。信じなければならない。確かに彼女はこう言ったのだから。"そのいち、人殺し禁止"と。