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何の意味が在りまして?


モニターの中で動き回る名前は、ただあちこちを散策しているようにしか見えなかった。というよりは、ただあちこちを散策していただけだった。そんな様子にハラハラとしている綱吉は、もう降参してくれと微かに呟いてすらいる。

「勝てるわけないよ、本物の暗殺者と殺し合いなんてそんなのっ!」
「十代目…」
「な、なに?獄寺くん、」
「その、お言葉ですが、さっきの苗字の目は、」
「う、うん?」
「裏の…殺しをしたことのある人間の目、でした」
「え…?」





「ゆらぁ、りぃ…」
「西条ちゃん、」

開け放たれた重い屋上の扉によりかかり、満点の星空を眺めながら口を動かす。

「"前"はわたしが、西条ちゃんの意図をきりました」
「…」
「ヒメちゃん"二回"は、嫌です」
「ゆ、らぁ…りぃ」
「降参してください」
「先ぱ、いは変、わ…りまし、たね」
「…」
「前な、らそん…な、こと」
「そう、かもしれませんです。でもヒメちゃんは少しだけ、昔に戻りたいと思ってますけど」
「"あの人"です、かぁ?」
「はいです…。結果的に数ヶ月だけでしたけど、ヒメちゃん、とても楽しかったです。凄く温かくて、優しくて、本当に…」
「…」
「でもヒメちゃんあの人の…ししょーの言い付け、守らなかったです。ヒメちゃんに普通の女子高生になって欲しいって、きっと、思ってくれていました。」
「…」
「ヒメちゃんは、西条ちゃんや萩原先輩にも、普通の女子高生生活して欲しいと思ってました。前は叶わないことだったですけれど、でも今は叶えることができることです。だから、降参してください。そして一緒に学校に行きましょう。たまに町に遊びに行ったり、探検したり、散歩したり。とっても、楽しいですよ」
「…」
「…」
「…こうさ、ん…し、ます」
ざわり、下の方で空気が振動した。

「嬉しいです。…西条ちゃんも、変わりましたね」
「そ、です…かぁ?」
「降参とかそういう言葉、知らない感じでしたから」
「そう…で、すね…」

(前は知らなかったはずの、儚い笑みを浮かべたそれには、)
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テーマ「人外ファンタジー」
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