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理由を求める


案内された場所は、昇降口だった。大きな欠伸をして目を擦りながら上靴に履きかえると、カツン、靴音が廊下に響いた。カツン…カツン、カツンカツン…。覚束ない足取りでだんだんと近付いてくるそれはホラーである。若干顔を青くしている獄寺を視界の隅に写しながら、ひょっこり廊下へ踊り出た。

「え、ちょっと、名前ちゃん!?」
「あ!」
「…あ、れぇ?」

ボロボロの、ギリギリで形を留めているような何処かの制服を着た小柄な少女が、少女には似合わぬ大きなナイフを両手に持ち立っていた。

「ゆらぁ、り」
「お久しぶりです、西条ちゃん」
「お…ひさし、ぶ…りです」
「え、知り合い!?」
「まぁそんなところです。で、私達はこの校舎内で殺り合うですか?」
「ええ、そうです」

チェルベッロが頷いた瞬間に、少女は動いた。弾丸のように速く、一瞬で名前の目の前まで動くとその勢いのままギラギラと光るナイフを名前の腹に、

「お、お待ちください!」

焦ってそう叫んだチェルベッロの声に瞬時に反応し、ぴたりととまった。名前の腹とナイフとの間はわずか数センチしか離れておらず、けれど冷や汗を流したのは綱吉や獄寺で、当の本人である名前はただ無表情に立っている。

「名前ちゃん、大丈夫?」
「…」
「おい苗字、」

何も言わない名前に、獄寺はビビってるんじゃないだろうかと思い振り向かせようと肩に手を置いた。そして名前は振り返った。ただ感情の無い笑みを張り付けて、絶対に勝てますよ、と言った。

「え、うん、…でもあの、無理、しないでね。死なないで、ね。」
「持っていてください」
「え、?」
「この中にはヒメちゃんのタカラモノが入ってます。ですから、必ず帰って来ます。それから中身は絶体に見ないと約束してくださいね」
「はは、絶対の間違いだよ、」
「それじゃあ、いってきます」

黄色と水色の、名前の髪に結ってあるリボンと同じ柄のポシェットを綱吉に手渡して、名前は笑みを浮かべた。それこそ純粋な、自嘲を浮かべた。



(どうしてそんな笑い方をしたのだろうか、と)
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