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I am fleer .


ぱぁん、と小気味のよい音とともに強烈な振動が脳内を駆け巡った。


目が覚めたときには、いっちゃんにおんぶされていた。誰も何も言わない、この空気の中私はいっちゃんの肩を軽く叩き地面へと降ろすよう促した。
若干ふらつきつつ崩子ちゃんからバッグを受け取って、3人の後ろを行くように歩く私は、本来ならばここにいるはずじゃなかったのだろう。この物語はいっちゃんの話。この物語の登場人物としてなら私は役不足。この物語と私は、本来ならば繋がらないはずだった。この場で彼らと別れたって差し支えないような人間で終わったはずだった。そして本来ならば、あの場で終わっていたはずの物語。彼女、想影真心の存在が無かったのなら。

私について、少し話をしようか。

まずこれは、大前提のこと。私は温かな母体から生まれた者ではなく、冷たいフラスコの中で生まれた物である。なぜそんなことが言えるのかといえば、簡単なこと。私が自我を確立した場所がフラスコの中だったからだ。けれどそのフラスコのあった"場所"は知らない。
私はそれから文字と、常識を覚えた。そのときにはすでにフラスコからは出ていたのだけれど、私を作った際に"何か"を失敗したらしく足腰が体を支える程に強くはなく、立つことはできなかった。
しかしそれ以外では秀逸だった。異質だった。私を作った彼らは畏れいともたやすく私を棄てた。
そして幾つかの場所を転々としていたとき、ついに彼女と出会った。私の"妹"である、彼女に。
それからの出来事は、まるで嵐のようだった。アレロパシーという自然界での作用が働いたのだと彼らは言った。私は一人で歩き、走り、力強く立ち上がることができるようになったのだ。自身のことのように喜ぶ彼女と手を取り合って生きられたらと何度思ったことか。その儚い願いはとうとう叶うことなく私は再び様々な場所を転々とするのだった。
そしてその先で出会ったのがフィーロ達だった。そこでは本当に、様々なことを知った。マフィアとカモッラの違いに始まり不死の酒に終わる、様々なこと。その中にはもちろん、蜂蜜の美味しさも含まれている。そんなある日、私は仕事を始めた。今までにはなかった、"命令"が始まったのだ。人の命を奪うその"命令"を、私は確実にこなしていった。フラスコから生まれた私。温かな母体から生まれた人間。それは似て非なるものとしか思えなかったのだ。それは、今でも変わらない。けれど私は、"生きている者"を殺すことに嫌気がさしていた。彼らを殺すということは、私の友人たちをも殺せるのだと言っているようなものだと、そう思ってしまった。殺す相手を"選ぶ"ようになった私は、再び畏れられ、そして今度は"始末"されようとしていた。
だから私は仕返しに私を"所持"していた彼らから大切な物を盗み、逃げ出した。それがここ、日本。
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