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That's a simple question .



ぐしぐしと目を摩っていると、さきほど蹴破られたばかりの扉から2つの小さな影が飛び出してきた。


「哀川潤はそろそろ第二体育館に着く頃ですから、一度死した殺し屋如き」
「簡単明瞭にさくっと殺してしまわなければなりません。あなたの引退の幕を引くのは私達ですよ、匂宮兄妹」

「…別に弱っちい奴とはやりあう気はないぜ。人数が59億9999万9999人足りないから出直してきな。そしたら少しは構ってやるから」


なんて会話があった数秒後にはもう立っているのは私と出夢君の2人だけだった。
文字通り、秒殺?


「…なんていうか、強いんだね!」


若干笑顔が引き攣っているかもしれなかった。





「あ、いっちゃん!待ってたよー!」


戸棚からくすねた錐をくるくると回しながら笑うと、どちら様?なんて言われたからとりあえず錐を投げてみた。


「じょ、冗談だよナマエちゃん。」


くるくる、くるりと数本の錐を器用に操りながらあくびを一つ。壊常がどこにもいるようには見えなくて私は正直とても暇だった。


「ナマエちゃんは、どうしてここに?」
「んー…、いっちゃんの味方をね!…って言えたら、かっこよかったのかもね!今日はちょっと、殺しに」


薄く笑って言うといっちゃんはちらりと崩子ちゃんに視線を向けた。


「聞かれなかったので」


知ってたのかよと言いたげな風だった。


「あ、闇口壊常って人に、会わなかった?」
「会っていません」


いっちゃんの代わりに崩子ちゃんが答えた。彼女が言うのなら、きっとそうなのだろう。


「そっか!んーじゃあ、取り敢えずはいっちゃん達に付いていってみようかな!」
「…」
「あー、遭遇率が高くなるだろうとかっては思ってないよ!さすがにお友達を餌に使うような卑怯な真似はしないよ!……うん」
「やだなあナマエちゃん、そんなことはこれっぽっちも考えていないよ。その最後の明らかに自分を納得させるためとでもいうような二文字なんて露ほどにも気にしちゃいない。ただ"どうして君はこの場所を、そして内情を知っているんだい"」
「"この場所に私の探し人である壊常がいて、彼女はあなたたちの物語に関与しているから"かな。まあ、いっちゃん達の邪魔はしないよ!」
「邪魔だなんてとんでもないよ。今は少しでも戦力が欲しい。それからこれは僕にはあまり関係なさそうだけど、答えられるなら答えて欲しい。君は闇口壊常を殺しに来たのかい」
「うん、そうだよ。理由は言えないけど。でもまあいっちゃんの目の前では殺しもしないし死にもしないよう、善処するからね!」
「できればしないで欲しいけどね」
「あはは」


笑ってごまかしてみた。


「まあ壊常と私が…んーん、私が誰かと殺し合いなんてことになったら、…絶対に、殺り合ってる私を、見ないでね」
「…」
「殺しちゃうから」


どうせ私にはそんなことはできない。今更情がどうのという問題ではなく、単に実力の問題だ。崩子ちゃんだけなら平気だが、出夢君は、無理だ。
けれど出夢君は何も言わなかった。ただ黙って先導するだけ。先程の会話から察するに彼は元々敵側だったらしいから、知っているのかもしれない。
きゅっとバッグの紐を握った。
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