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16:01


閑静な住宅街を突き進みながら、ぽつりと出夢は言葉を零した。


「なぁ、名前」
「…」
「僕はやっぱり沢田んとこに入るよ」
「…」
「僕は理澄をもう死なせたくないんだよ。」
「…」
「僕らは前の僕らとは違うんだ。性別が違う今、2人で1人なんてできるわけもないだろ?だから僕が死んだとしても、僕は理澄のストックにはならない。逆もしかりさ。」
「…」
「それに何より、もう僕らは強いだけと弱いだけではいられない。」
「…」
「名前はさ、武器作ってても昔みたいに友達とおもしろおかしく笑いあったりとか、普通にいいやつと結ばれて、穏やかに生きるべきだ。名前だってそれを望んでんだろ?」
「…」


じっと名前を見つめる出夢の瞳には確かに、微かに哀しみと迷いの気配があった。強さだけでは無い、弱さの感情。名前はいつものように笑みを浮かべて、今まで閉ざしていた口を開いた。


「望んでる。武器を作るのはやめられないけど、穏やかな日常を過ごしたいとは思ってる。でも出夢の言う友達の中には、沢田くんと関わりのある京子や花がいる。それになにより、出夢も、理澄も、友達なんだよ」
「…」
「出夢が行くなら私も行く」
「…」
「私のために、迷ってくれてありがとう」
「っ」


名前は少し驚いた顔をした出夢の手を取り、いつの間にかとめていた足を再び動かした。なかば引きずられるような形で歩く出夢に聞こえるか聞こえないか程の音量でぽつり、言葉を零しながら。









(だから今度は、生きよう)
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