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虚しさに嘲笑


下駄箱を開けて一番最初に目に入ったのは自身の靴でも、ましてや漫画やどこかの小説だとかであるようなゴミや死骸だとか、誰かの手首だとかそういったものではなくって、桃色の可愛らしい封筒だった。
"放課後、屋上で待っています"とだけ書かれたそれを鞄の中に突っ込んで、何もなかったかのように教室へと歩いて行く私の瞳は、微かにでも冷たい色を宿していたかもしれない。


ひらり、ひらりとリボンを舞わせ、あやとりを操りながら屋上を歩いていた。もちろんただのあやとりではなく、この屋上全体を覆う見えない糸を操るためのものなのだけれど、はたから見ればただのあやとりである。私が屋上に来てから何分たっただろう。ふとそう思い立ち止まったが、今日は運がいいのか悪いのか何も用事はなかったのでまぁいいかと思考を放棄した。

それからさらに何十分かたった後。錆び付いた音をたてて屋上の扉が開いた。


「えっ!新しい仲間って苗字さんだったのっ!?」
「なんのことですか?ヒメちゃんはただ呼び出しをいただいたからここに来ただけですよ」
「あ、そうなんだ…ってえぇぇええ!?よ、呼び出しっ!?」
「ですですよ。ヒメちゃんこわくてこわくて」
「いやでも、それって多分…」
「ちゃおっす」


やっぱり、と呟いた彼に一瞬だけ視線をやって、それからこっそり彼と一緒に屋上へ足を踏み入れていた赤ん坊へ視線をやった。


「オレが呼んだんだ。オレはリボーン。初めましてだな。苗字名前」
「不甲斐者が学校に入ったらこっわぁい委員長さんに怒られちゃいますですよ?」
「それって部外者じゃ…」
「沢田くんって案外微妙なツッコミするんですね、そんなんじゃそのうち捌ききれなくなるです」
「ほとんど初対面の人にダメ出しされてるー!」
「(にやっ)おい苗字名前、お前ファミリーに入れ」
「ファミリー…家族、ですか?遠回しな告白ですね、ヒメちゃんそういうのあんまり好きじゃないです。ごめんなさい。」
「ちげーぞ、マフィアにならねぇかっつってんだ。ボスはツナだぞ」
「マフィア、ですか?人を殺したりするマフィアですか?」
「否定はできねぇが、主に人を殺すのは暗殺部隊や殺し屋だ。したくないならしなくていいんじゃねぇか、ツナはさせないだろうしな。」
「あたりまえだろ!ていうか俺はボスにならないって!」
「…別に、いいですよ。人探しを手伝ってくれるのなら。ヒメちゃん自分が頭良くないっていうのはわかってます。だからといって殺すこともできませんけど、それでもいいのなら。」
「そ、そんな…!」
「よかったな、ツナ。決まりだ。」

にやっと笑みを浮かべて笑ったリボーンに笑いかけて、結局使うことのなかった糸をこっそりと回収し屋上から去った。



(別に、私は何かを期待していたわけではないのだ。この選択がどんな悲劇や喜劇を生もうとも、私はただただ純粋に、)







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テーマ「人外ファンタジー」
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